ひとつ、ふたつ、ひみつ。

制服に着替えて、洗面所で真尋くんと並んで歯を磨いて。
ふたりそろって、「いただきます」を言う。

そんな日々が、当たり前になってきた。

そして、当たり前はもうひとつ。

──ピンポン、ピンポン、ピピピピピンポンッ。

「こまりー、おい、こまりー! 学校行くぞ」

ちょうど朝ごはんを食べ終わった頃に、玄関の外から呼ばれる私の名前と、チャイムの連打。

「わ、あっくん最近早いなぁ。真尋くん、いってきます」

かばんを手に取って、席を立つ。

いつもなら、真尋くんは普通に私を見送ってくれるのに。

「──!?」

無言で腕をぐっとつかまれて、動きを静止させられた。

「えっ、な、なに? 真尋くん」

「俺も、学校に行ってみたいな」

「……えっ?」

「こまりー、まだか、おい」

私のハテナと、あっくんの催促(さいそく)が重なる。

今、学校に行きたいって、言った?
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