ひとつ、ふたつ、ひみつ。
「学校? なんで?」

「こまりがいつも、楽しそうに家を出ていくから」

ぷくっと右頬をふくらませながらの言い方に、悪意がありませんか、真尋くん。

あと、私さっき、学校行きたくないって言ったばっかりだよね。
楽しそう、とは。

でも、そっか。
真尋くんは17歳だけど、元の世界ではもうとっくに高校を卒業している。

こっちの学校を知りたいのも、分かる気がする。
同世代のあっくんのことも、気になるって言ってたし。

でも、真尋くんは制服を持っていないし、一目で部外者だと分かるから、一緒に登校なんて出来ない。
しかも、あっくんがいるし。

……あ。

「そうだ。学校の住所が分かれば、屋上とかにワープで行けるかな?」

屋上は生徒の立ち入り禁止だから、真尋くんが私服でいてもバレる危険性は少ないと思う。

私は、スマホで学校の住所を見せた。

「だめなんだ。俺の世界の住所とは違うし、使用者の中に具体的なイメージがないと、行けない。このマンションとか、ふたりで一緒に行った運動公園なら行けるけど」

そういえば、前にそんなこと言ってたっけ。

そんなふうにしゅんとされると、何とかしてあげたくなっちゃうから、困る。

使用者の中に、具体的なイメージか……。

あれ? それなら。
< 83 / 266 >

この作品をシェア

pagetop