冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
手料理なんて、程遠い。
思い返すと一周回っておかしくなってきて、自嘲気味な笑みが漏れていた。
「誕生日どころか、手料理を作ってもらったことがなかったです。あ……カップ麺に、お湯を入れてもらったことはあったかな」
自分で言っていて虚しくなる。
だけど、それが私の歩んできた人生。そして、自分が選んだ結婚相手だったのだ。
裕翔さんはキッチンの中で黙って話を聞いてくれている。
沈黙が落ちて、紛らわせるようにワインを口に含んだ。
「だから、こんな風にお祝いしてもらうことが嬉しくて。お花も、お料理も、私にとっては初めてのお祝いです」
むしろ、かなり贅沢な誕生日を過ごさせてもらっている。
世の男性で、誕生日に素敵なフラワーアレンジメントをプレゼントしてくれて、こんなコースの手料理を振る舞ってくれる人はどのくらいいるのだろう。
しばらくしてダイニングテーブルに戻ってきた裕翔さんの手には、見るからに柔らかそうで美味しそうなステーキが載ったプレートが二枚。
「仔牛のステーキだ」と、前菜のプレートと取り換えるように置いてくれた。
「塩だけでシンプルに食べるのがいいと思うけど、どうする?」
「あ、はい。じゃあ塩だけで」