冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
普段、ステーキはソースをかけずに塩で楽しむ派。
そこまでいいお肉でなくても、ステーキは塩で食べて基本大満足だから、こんな美味しそうなステーキなら塩というシンプルな食べ方が絶対に美味しいはず。
裕翔さんはダイニングテ―ブルの端に置いてあるミルに手を伸ばす。
私の前に出たステーキの脇に岩塩を落としてくれたのだけど、それが電動ミルで思わず「電動だ……」なんてつい言ってしまった。
男性のひとり暮らしでこうして電動ミルなんか使っているのがオシャレだし、料理好きを裏付ける。
再び向かいの席に腰を落ち着けた裕翔さんは、じっと私の顔を見つめた。
「悪かったな。過去を掘り返すような質問をして」
「あ、いえ。こんな話でよければもいくらでもします。はたけば埃がいくらでも出そうです」
どうしようもない自分の発言が恥ずかしくなって、へへっと笑ってごまかす。
そんな私とは対照的に、裕翔さんは「いや……」と真顔でカトラリーを手に取った。
「訊いておいてこういうのも変な話だが、訊かなければよかったと後悔した」
「え……?」
「俺が質問したことで、過去を振り返った……昔の男を思い出させたことを失敗したと」
そんな風な言い方をされると、私がまだ元夫のことが吹っ切れていないように思われているのではないかと焦燥感に襲われる。
そんな誤解はされたくなくて、「そんなことないです」ときっぱりとした口調で否定した。