冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「なぜ、私だったのかな、と。婚約者としてご両親に会ったことです。以前、離婚したばかりの私だったら問題なく務めてくれるだろうと言ってましたけど、それだけの理由で膨大な社員の中から選ばれるのかなって。きっと、私と同じような境遇の人間も社内にいると思いますから」
「なるほど。確かにそうだな。知花と同じ境遇の人間は社内にいないことはない」
裕翔さんは再び食事の続きを始める。その様子を前に、私もフォークを動かした。
「言ってなかったが、君のことは数年前から知っていた」
「え……? 数年前、ですか」
数年前に裕翔さんとの関わりがあった?
もしそうだとすれば忘れることはきっとない。
でも、心当たりが……。
「といっても、俺が一方的になんだ。知花は知りもしないと思う」
「一方的? どういうことですか……?」
ますますよくわからなくて、やっぱり食事の手が止まる。
裕翔さんはどこか意味深にクスっと笑った。
「昔、地下鉄で老人を助けたことを覚えていないか。車椅子で乗車に困っていたところを、親切にしてもらった。降りる駅が違うのに付き添いまでしてもらって」
そんな話をされて、過去を振り返る。
そして、すぐに思い当たる出来事が蘇った。
「君にとっては、困っているご老人を助けるなど、日常的なことかもしれないから、覚えていないかもしれないが」
「覚えています。三年ほど前だったかと。ちょうど、私が結婚したばかりの頃です」