冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~


 その日は午前休をもらって、病院に行ってからいつもの通勤電車で会社に向かっていた。

 普段の通勤時間とは少しずれた時間帯、駅はそれほど混んでおらず、電車内も座席が空いていて珍しく座ることができた。

 会社まであと数駅という停車駅。乗車口近くに座っていたところ、開いたドアから車椅子のご老人が車内に乗り込もうと待っていた。

 駅員がついてスロープを用意していたものの、新人なのかあまり要領をえていなかった。

 車椅子を押して乗車させようにもうまく操作できず、その様子につい席を立ち上がり駆け付けていた。

 無事に乗車して電車が発車したものの、駅員がそのご老人の降りる駅を確認したのか、確認したとしても降りる駅にきちんと伝達しているのか、気がかりに思いご老人に降りる駅を訪ねた。

 すると、私が降りる一駅先の駅だと教えてくれたため、万が一を想定して付き添うことにしたのだ。

 ご老人は親切にありがとうと喜んでくれて、何度も何度もお礼を口にしてくれた。

 そのとき、車内で少し話もしたから記憶にはっきりと残っている。

 それまで元気で自分の足で歩いていたけれど、少し前に腰を痛めて車椅子での外出をしているということ。

 周囲に反対されたけれど、ひとりで外出してみようと電車に乗ってみたということ。

 お年なのにバイタリティ―溢れる方だなと話していて感じていた。

 でも、そのときのことを、なぜ裕翔さんが……?

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