冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「もう帰ったあとかもしれないと思いながら通りがかった。タイミングが良かった」
「お疲れ様です」
「家まで送ろう」
裕翔さんはそう言って助手席のドアを開けた。
「いいんですか? ありがとうございます」
前回この車に乗せてもらったのは誕生日のとき。もう二か月ほど前のことだ。
すぐに車は発信する。
「好調なスタートをきっていると報告を受けている。忙しいか」
車を出してすぐ、裕翔さんが新サービスのことに触れてきた。忙しい中、この一週間のことをすでに知ってもらえていることが嬉しい。
「はい、おかげ様で、ありがとうございます。このまま軌道に乗っていけたらいいなと思ってます」
「ああ、きっとますます流行ることは間違いない。明日のイベントも期待している。スケジュールを調整して、顔を出す予定だ」
「明日、来ていただけるのですか? ありがとうございます」
仕事の話を終えると、車内に沈黙が落ちる。
この間の誕生日のお礼を改めて言おうと思ったとき、となりからクスっと微かに笑う気配を感じた。
「前回会ってから、もう二か月近く経つな」
「そうですね。八月の誕生日は、お祝いありがとうございました」
「それはもう何度も聞いてるぞ」
裕翔さんはまたクスっと笑う。
「そうですけど、お会いするのはあの日以来ですから」