冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
普段過ごしている五階から、訪れたことのない三十二階を目指す。
エレベーターに同乗していた人たちも途中でどんどん降りて行き、最後は私ひとりだけになった。
到着した三十二階は、エレベーターを降りた途端に床が絨毯でまず驚く。この階に降りることは初めてだけど、こんなに仕様が違うとは思いもしなかった。
エレベーターホールを出ると、ガラス張りの廊下が現れる。
周辺のオフィスを見下ろす眺めで、晴れた今日はかなり遠くのほうまで街が望める。
右手にガラス張りからの景色を見ながら、向かうはCEOの執務室。
三十二階は、CEOをはじめ、重役の個人的な執務室が並ぶ。
いよいよその部屋を前にして緊張に襲われていくのを感じる。
少しでも落ち着けるように深呼吸をし、目的の部屋の前で足を止めた。
筆記体で名前のプレートが掲示されているのを目にし、勝手に心拍が上がっていく。
ダークブラウンの木目調のドアをノックすると、十秒もしないうちに向こう側からドアが開かれた。
現れたのは、シルバーフレ―ムの眼鏡をかけた女性。
百六十センチ身長があるかないかくらいの私よりも大きい姿は、ダークグレーのスーツを身に着けている。黒髪をきっちりとまとめ、凛とした見るからに仕事のできそうな女性だ。
彼女は私の首からかける社員証を目にし、「お待ちしていました」とドアを大きく開く。
声の感じからいってもこの方がさっき電話をしてきた板東さんだろうとすぐにわかった。