冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「コミュニケーションチームの唐木田です。お疲れ様です」
「お疲れ様。仕事中に悪かった」
「いえ……」
「とりあえず、この距離間で話すのはおかしい。もっと前へ」
入口を入ったところで立ったままの私に、七瀬CEOが手招きをする。
「あっ、はい。申し訳ございません」
初めてのことにあたふたする。
呼び寄せられて足を進めるものの、どうも動きがぎこちない。
近づいていくにつれて、鼓動が早鐘をついていくのを感じていた。
「すみません、失礼します」
デスクの目の前まで生き、再度頭を下げる。
初めて顔がよくわかる近さまで接近し、改めてその整った顔立ちに釘付けにされた。
綺麗にセットされた艶のある黒髪。意志強そうな眉に、細く高い鼻梁。アーモンド形の目は奥二重で印象深く、薄い唇はどこか色っぽい。
彫刻のような顔の持ち主で圧倒されていると、七瀬CEOがじっと私を見つめた。
「突然呼び出されて驚いているかもしれないが、今日呼んだのは悪い話ではない」
なにかやらかしてしまったのかと良からぬことも頭を過っていたから、悪い話ではないという予告に安堵する。
「唐木田さん、君にひとつお願いしたいことがある」
七瀬CEOはデスクに両肘をつき、握り合わせた拳を口元に置く。
真っすぐ射抜かれて、その目力に息を呑んで構えた。
「君に、私の婚約者役を演じてほしい」