冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「困っているなら、君も結婚を考えている相手がいると言えばいい」
「えぇ?」
「必要があれば、その見合いを中止にする手伝いもするぞ」
信じられない提案をされて絶句する。
そんな私とは対照的に、七瀬CEOはくすっと笑ってみせた。冗談、ということ……?
「さっき、ただとは言わないと言っただろう。他部署への異動や、別会社へ移ることも優遇するつもりだ」
「え……」
「今の環境では、君の本来発揮できるはずの力も出しきれないのでは? と思ってな。どうだ、君とっても悪い話ではないだろう。もちろん、話を受け入れてもらえるなら次の人事のタイミングを待たず、至急で対応する」
七瀬CEOは「用件は以上だ」と話をまとめる。
私の返答を待つ様子に、なんと答えらたいいのか言葉が出てこない。それ以前に、話の内容を処理しきれない。
でも、多忙な七瀬CEOを前に、ここで黙りこくるわけにもいかず、とりあえず口を開いた。
「……考える、時間をください」
それしか適当な言葉が見つからず、彼の顔を見上げて返事をする。
七瀬CEOは「わかった」と言って再びデスクへと戻っていった。
「気持ちが固まったら、連絡をもらえるか」
そう言いながらデスクの引き出しを開け、名刺を取り出す。その後ろに手元のペンでなにかを書き込んだ。
「俺のプライベートな連絡先だ。ここにかけてくれ」
「わかりました」
自社のCEOからこういった形で名刺を受け取ることになるなんて思いもせず、受け取る手が震えそうになる。
「時間をもらって悪かった」
「いえ。では、失礼します」
最後に深く頭を下げ、足早に執務室をあとにした。