冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~


 言葉に詰まった時、今日の夕方の出来事が脳裏で再生される。


『困っているなら、君も結婚を考えている相手がいると言えばいい』

『必要があれば、その見合いを中止にする手伝いもするぞ』


 七瀬CEOが言っていた言葉が鮮明に蘇りハッとする。


「と、とにかく、五月の連休に帰るのは厳しいから、お断りして」

《もう……まあ、今回は急に言ったから予定合わなかったってお伝えしておくけど、盆休みには必ず予定合わせてちょうだいね》

「わかった、とは言えないよ。とりあえず、ご飯食べるとこだからまたね」


 半ば強制的に通話を終わらせスマートフォンを置くと、自然とため息が漏れ出た。

 予定合わせてと言われて、『うん』とか『わかった』とはやっぱり言えない。

 でも、母のあの調子は簡単には諦めてくれなそうだ。

 両親がお見合いをさせたいのは、結婚後たいした年月も経たずに離婚してしまった私の幸せを願ってのこと。

 だとすれば、この先私がしっかり幸せな人生を歩めば安心してくれるということだ。

 私が今、求める幸せ。

 それはやっぱり、仕事でのキャリアアップをして、社会的に認めてもらえることだ。

 傍らに置いたバッグを手に取り、名刺入れを取り出す。

 今日もらった七瀬CEOの名刺の裏側にメモされた番号をスマートフォンに打ち込んだ。

 発信をタップしてコールが鳴り始めてから、かけてしまったことを早まったと後悔する。

 でも、時すでに遅し。

 今切っても着信は残ってしまうから引き返せない。

 コールが止まり向こうから《はい》という応答が聞こえて思わず背筋が伸びた。

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