冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
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別れ際にぺこりと頭を下げて行った彼女の表情を思い返し、どこが失敗だったのかをずっと考えていた。
昼休みにランチに誘い、一緒に食事をする。
誰にでも存在する、ありふれた日常のひとコマなはずだ。
しかし、彼女は終始ぎこちなかった。
人目を気にしていたのはわかったが、配慮が足りなかったか……。
「お帰りなさいませ」
執務室に戻ると、出がけと同じ秘書室のデスクに板東がかけていた。
「ただいま。評判通り美味かったよ、あそこのガレット」
「さようでございますか。それはよかったです」
「ああ、ありがとう」
執務室に入っていく俺の後を坂東がついてくる。
「ですが、浮かない顔をされています。お相手の方の口に合わなかったなどでしょうか?」
どうやら冴えない顔を見せてしまっているらしく、板東が気にかけてくる。
彼女とももう数年になる長い付き合いだ。
婚約者とランチに行くと出かけていって浮かない顔をしていれば、板東は秘書として心配するタイプの人間だ。
「いや、そういうことではない。ただ、少し不快な思いをさせてしまったかもしれない」
「不快、ですか?」
「ああ。ひと目が気になったようでな」
自分自身、生まれたときからこの特殊な環境で生きてきたから、それが特別だと気づいたのは物心がついた頃からだった。
人から注目を浴びることにも慣れ、いつからかなんとも感じなくなっていた。
今日、彼女と一緒にいてそれが普通ではないことを久しぶりに思い出した。