開発部の門田さんは独占欲が強すぎる
 私が勤めるのは高本(たかもと)ホールディングスという大手企業。たくさんの事業を持ち、私が属しているのは洗剤系統を扱う部署。

 まさか私がこんな大企業に勤めることになるなんて――と想像もしていなかった。

 元々務めていた会社を辞めることができたら、それでよかったのだから。

 自分のデスクに向って、先ほど門田さんから押し付けられた書類に目を通す。

(これは開発部ならだれでもいいのね)

 そりゃあ門田さんがやらないはずだ。

 などと思いつつ、私はボールペンで空欄を埋めていく。

 記入している間にデスクトップパソコンを立ち上げておこうと、電源を入れる。

 一応昼休憩の間にメールが来ていないか見ておかないといけない。

 ある程度記入し終え、門田さんに視線を向ける。彼は一心不乱にパソコンに向き合っていた。

(人間性に問題があっても、仕事は完璧だからねぇ)

 そのせいで、上層部は扱いに困っている――なんて話を耳に挟んだことがある。

 私は立ち上がって門田さんのデスクに近づく。パソコンの横に先ほど記入した書類を置くと、彼は軽く手を挙げた。了承の意味だ。
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