開発部の門田さんは独占欲が強すぎる
「門田さん。明日ですが、視察が来るの覚えています?」
「あぁ、あれね。覚えてるよ」
彼が椅子ごと振り返る。
「どうせ大したこともしないし、橘が気にする必要はないよ」
「そうはいってもですねぇ」
この部屋の有様を見て、この人はなにも思わないのだろうか?
散らばった書類。あふれたごみ。見るも無残な状態である。
「一応片付けておいたほうがいいと思いますけど」
私の言葉に門田さんは返事の代わりに大きく息を吐いた。
彼が前髪を掻きあげる。覗いた素顔に、不覚にもいつもドキッとさせられてしまう。
「気にしなくていいよ。どうせすぐにこの状態に戻るんだから」
「で、ですけど」
鋭い瞳が私を見据える。
私はこの人に出会うまで、この世にはこんなにもかっこいい人がいることを知らなかった。
芸能人と言っても通用しそうなほどの美貌。
「じゃあ、橘が片付けて。俺は忙しいんだから」
「……そうですね」
もう、説得はあきらめよう。
そもそも、はじめから私がやったほうが早い。この人に期待するだけ無駄だ。
(この人のことみたいに、全部割り切れたら楽なんだけどな)
と思っても、すべてを簡単に割り切れることはない。
特に、元々好きだった人のことなんて。
頭の中に浮かぶのは、昼休みに見たメッセージ。
(今更会いたいとかよりを戻したいとか。どれだけ自分勝手なのよ)
なのに心が揺れるのは。
――私の中に、あの男への未練があるからなのだろう。
(本当に自分で自分が嫌になるわ。あんな浮気男のことを忘れられないなんて)
一人物思いにふける私は気づかなかった。
門田さんが私のことをじっと見つめていたことに。
「あぁ、あれね。覚えてるよ」
彼が椅子ごと振り返る。
「どうせ大したこともしないし、橘が気にする必要はないよ」
「そうはいってもですねぇ」
この部屋の有様を見て、この人はなにも思わないのだろうか?
散らばった書類。あふれたごみ。見るも無残な状態である。
「一応片付けておいたほうがいいと思いますけど」
私の言葉に門田さんは返事の代わりに大きく息を吐いた。
彼が前髪を掻きあげる。覗いた素顔に、不覚にもいつもドキッとさせられてしまう。
「気にしなくていいよ。どうせすぐにこの状態に戻るんだから」
「で、ですけど」
鋭い瞳が私を見据える。
私はこの人に出会うまで、この世にはこんなにもかっこいい人がいることを知らなかった。
芸能人と言っても通用しそうなほどの美貌。
「じゃあ、橘が片付けて。俺は忙しいんだから」
「……そうですね」
もう、説得はあきらめよう。
そもそも、はじめから私がやったほうが早い。この人に期待するだけ無駄だ。
(この人のことみたいに、全部割り切れたら楽なんだけどな)
と思っても、すべてを簡単に割り切れることはない。
特に、元々好きだった人のことなんて。
頭の中に浮かぶのは、昼休みに見たメッセージ。
(今更会いたいとかよりを戻したいとか。どれだけ自分勝手なのよ)
なのに心が揺れるのは。
――私の中に、あの男への未練があるからなのだろう。
(本当に自分で自分が嫌になるわ。あんな浮気男のことを忘れられないなんて)
一人物思いにふける私は気づかなかった。
門田さんが私のことをじっと見つめていたことに。