開発部の門田さんは独占欲が強すぎる
 終業時間を迎えるも、門田さんはパソコンの前から動こうとしない。

 私は一足先にパソコンの電源を落とし、帰る準備をはじめた。

「門田さん。お先に失礼します」
「ん」

 後ろを通りかかる際に声をかけると、彼は軽く手を挙げた。

 いつもこの調子なので、気にすることなく更衣室に向かう。

 更衣室にはすでに数名の女性社員。彼女たちは着替えながら話に花を咲かせていた。

 私は彼女たちの隣を通り過ぎ、自分のロッカーを開ける。中からスマホを取り出す。画面を点けて、一番に視界に入った通知に顔をしかめた。

(うわぁ、まだ来てる……)

 性懲りもなく、元カレからメッセージが来ていた。

 相手にしたくないので、いっそブロックするか。着信も拒否しておいたほうがいいかもしれない。

 私は迷いなく送信主をブロックし、着信拒否にもしておいた。

 ……これで、あきらめてくれるといいんだけど。

「あっちから捨てたくせに、なんで今更……」

 文句を垂れ流しつつ、私服に着替える。

 シンプルなブラウスと紺のロングスカート。鞄を持って、更衣室を出た。

 エレベーターホールを目指して歩いていると、目の前から長身の女性が駆けてくる。ヒールを履いているとは思えないほど、軽い足取りだった。
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