開発部の門田さんは独占欲が強すぎる
 私がその名前を口にすると、こちらをうかがう人影は場を立ち去った。

(今の、門田さんだよね?)

 どうして逃げたのだろうか。私は頭上に疑問符を浮かべつつも、エレベーターホールへと歩いていく。

 ホールにつくと、ちょうどエレベーターが来たところだった。たまにはいいこともあるんだな――なんて思いつつ、エレベーターに乗り込む。

(竪山さんのこともあるし、もしかしたら今日はいい日なのかも)

 ――とルンルン気分になっていたときが、私にもありました。

「うそ、さっきまで降ってなかったじゃない」

 私が帰るときになって、雨が降っていた。それも、バケツをひっくり返したような土砂降りだ。

 鞄をあさって折り畳み傘を探す。けど、見つからない。そして、思い出した。

「一昨日使って、乾かしたままだ……」

 どうしてこんな日に限って、私は傘を忘れてきたのだろうか。

 最寄り駅まで走ってもいい。ただ、いろいろと無事では済まない気がする。

(雨が止むまで待とうかな……。いや、いつ止むかわかんないし)

 通り雨ならいい。でも、これが通り雨だという確証はない。

 待っているうちに数時間過ぎる可能性だってあるのだ。
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