生徒会長と私

第2話

カフェにいた TUBASAくん……… 正確には
氷室 翼くんは一礼すると壇上で生徒会長としての抱負を語る。

「生徒会長の氷室 翼です。
 投票してくれた人たちの期待に応えたいと思います。公約に掲げたものは………」

長めの前髪に、黒縁眼鏡、薄い唇に、白い肌、でも、今は緊張しているのか、
うっすらと頬が赤くなっている。

呆然とする私と友だち三人。
少し前に生徒会の選挙があったが興味がなくて選挙演説もろくに聞いてなかった。

―もっとしっかりと聞いていれば、昨日の失態をしなくて済んだのにぃー!!

 がっくりと肩を落として、新生徒会の人たちの気負った抱負を聞いていた。

「ねぇ。それ外したほうが良くない」
 私のすぐ後ろに並んでいた、昨日、一緒だったせりなが、ポニーテールのリボンを指さす。
 私のトレードマークの赤いリボン。
昔読んだ漫画の主人公が同じリボンをしていた。私の黒い髪によく似合う赤。だけど、今はそんなこと言っている暇はない。
こんな目立つものをつけていたら速攻見つけられてしまう。
私は隠れるように身をかがめてリボンを外して制服のスカートのポケットにしまう。

 カフェであんなお店の人をからかうようなことをしたのだ。
お店に迷惑をかけたと訴えられるまではいかないが、叱られるくらいはするだろう。

「逃げよう」
誰が言い出したかわからないが、
ストレートの髪をおかっぱにした優等生タイプの“川野 せりな”と
ぽっちゃり系でおっとりしたタイプの“大山 照美”、
不思議ちゃんの“星崎 ルナ”と
私、“楓 陽葵”の
四人の意見は一致した。

 朝礼が終わり、生徒たちが教室にもどり始める。
 ぞろぞろと生徒たちが廊下を歩き、自分の教室に戻っていく中、
スマホの通知音が鳴る。

「何よ。こんな時間に………」

 メールの送信元と文面を見た瞬間、サーッと血の引く音が聞こえた。

「送信元 tubasa-himuro@ーーー
 本文は『昨日のことで話がある。放課後、必ず、残りの三人も連れて生徒会室に来い!』」

 文面を読み終わると同時に「ひー」と悲鳴を上げた。
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