二匹の神使な妖獣からの溺愛が止まない
さてさて。



だいたい初めて何かに化けたりするのは失敗するもの。



今日一日の練習でできるとは思ってない。



どのくらい妖術が使えるかな~。



耳くらいは消せるかな?



そんな気持ちで見てた。



なのに…。



「えいっ」

「…」



信じられない…。



一瞬で人間の姿になった…。



耳と尻尾は消え、長い赤毛は黒のショートカットに。



「すげえな、翠! 天才!」



煌が翠の頭をわしゃわしゃと撫でる。



翠は誇らしげ。



「まるで幼いときの惺音様を見ているようです」



蓮麻も感慨深げにそう言う。



そうか、翠はあたしに似て妖力が強いのね…。



「この姿もかわいいな~!」



親バカの煌はそう言って翠にチューしてる。



「やだ! きたない!」



翠がそう言ってイヤイヤする。



煌はズーンって…。



おもしろい…。



それから一日翠と遊んで、泣く泣くお別れの時間…。



「翠…またね…」

「ヤダーー!!」



翠は泣きわめいてる。



この姿を見るたびにあたしは胸が痛くなる。



毎月こんな想いを翠にさせるなんてすごく罪深いことをしてると思う…。



「翠、ほら、こっち見て」



煌がそう言って握った拳を見せた。



そこから妖術でホタルを出して…。



「うわぁ~」



翠の涙が止まった。



ふふ、煌と初めて会ったときと同じ。



これをすると毎回必ず泣き止むの。
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