神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
よくよく、図書館を利用している人を見てみると。

彼らはみな、俺達と同じように、利用証を持っていた。

さすがに、上級魔導師はなかなかいないようで。

俺達みたいに「上級」のスタンプが押された利用証を持っている人は、見かけなかったが…。

「キルディリア魔王国の図書館は、魔導師しか利用出来ません」

シディ・サクメが、そう説明した。

えっ…。

「利用者は必ず、入り口で魔導師証明書を提示して、利用証を受け取り、館内にいる間は必ず、身につけていなければならない決まりなんです」

「…」

出たよ。

キルディリア魔王国の、意味不明な決まり事。

こいつら…証明書だの利用証だのが好きなのか?

「…ってことは、魔導師じゃない人は?青い証明書の人達は…」

「『青カード』に、図書館を利用する権利はありません」

「…」

なんてことだよ。

ここ、国立図書館なんだろ?

国営の施設なんだから、魔導師か否かになんて関係なく、誰でも使えるようにしろよ。

「そもそも、館内に所蔵されている本はすべて、魔導書ですから。『青カード』には読めませんよ」

エリトール君が、朗らかに笑いながら言った。

笑いながら言うことじゃねーだろ。

「…この図書館、魔導書しか置いてないのか?」

「はい、そうですが…」

「…」

…信じられない気分だ。

ルーデュニア聖王国の国立図書館にも、魔導書はたくさん置いてある。

そりゃもう、山のように置いてある。

でも、魔導書じゃない一般図書も、同じくらいたくさん置いてある。

中には、流行りの漫画もあったりして。

魔導書を調べに行ったのに、気づいたら漫画を読んじゃってて、時間を浪費したことも何度か…。

…って、俺のそんなつまんない失敗話はどうでも良い。

どうせ図書館には、魔導師しか入館出来ないのだから。

置いてある本も、魔導書だけ…。

…理屈は、分からなくもないが。

でも…。

「…魔導書じゃない本にも、世の中には良い本がたくさんあると思うぞ」

俺は、サクメにそう言った。

食べ物と本の選り好みは良くない。

小学校の時、そう習わなかったか?

「魔導書じゃない本…?…それは低俗な本では?」

「低俗なんてもんがあるかよ…。為になる本だよ」

「そうですか?ルーデュニア聖王国ではそうなんですか…」

ルーデュニアに限らず、世の中の多くの図書館では、そうだと思うよ。

様々なジャンルの本を読めてこそ、図書ってもんだろ。

一つのジャンルの本しか置いてないんじゃ、つまんないよ。

「参考までに、キュレム様のおすすめの本を教えてくれませんか?」

ここぞとばかりに、ブラマンジュちゃんが。

目を輝かせて、そう聞いてきた。

えっ。

「…」

…何?その期待の眼差し。

「上級魔導師たるキュレム様のおすすめの本なのだから、きっと素晴らしい著書に違いない」という、期待を込めた眼差しだ。

…そうさな…。…俺のおすすめの本…。

思い出す。最近読んだ本の中で、記憶に残ってるものは何だったか。
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