神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
折角、外に出て美味しいものを食べてきたのに。

帰ってきたら、早速部下からお小言。

あー、気分悪い。

それに俺は、何とかして、旧アーリヤット皇国民の皆さんに。

ナツキ様が生きていることを伝える…その手段を、考え始めていたところだった。

…それなのに。

「キュレム様、ルイーシュ様。何か、お飲み物はいかがですか?」

ゆっくり考え事をしたくても、そんな暇を与えてくれないのが、この部下二人。

ブラマンジュちゃんとエリトール君である。

飲み物とかどうでも良いからさ。

ちょっとほっといてくれないかな。…なんか、もう、色々と。

「いや…別に…要らない」

「…そうですか」

いつもいつも、喉が乾いてると思うなよ。

お前らの勧めるままに飲み物ばっか飲んでたら、胃の中たぷんたぷんになるわ。

…すると。

「もし時間があるようでしたら、少しお願いしたいことがあるのですが…」

…と、ブラマンジュちゃんが言い出した。

「…お願いしたいこと?…って、何?」

「実は…その、キュレム様に稽古をつけていただきたく…」

「私は、ルイーシュ様にお願いしたく存じます」

ブラマンジュちゃんは俺に。

エリトール君はルイーシュに、それぞれそう言った。

…はぁ、そうなん?

二人共もじもじしながらも、何処か期待を込めた眼差しである。

…そういや、専属見習い魔導師ってのは。

師匠と弟子のような関係で、師匠の上級魔導師が、弟子の見習い魔導師に、魔法の指南をしたり、面倒見てやったりするんだっけ。

俺達、自分の面倒ばっかり見てもらって。

全然、二人の面倒は見てなかったな。

まぁ、半ば押し付けられた弟子なんだけど。

そろそろ師匠らしいことをしてくれ、というクレームなのだろうか。

これでも一応、二人共気を遣ってるんだろうな。

師匠である俺とルイーシュが忙しそうな時は、敢えて声をかけず。

こうして、ちょっと暇そうな時に、「稽古をつけて欲しい」とせがんでくるとは。

気遣いの出来る、良い子達じゃないか。

だからこそ、何だか申し訳なくなってくる。

「期待してるところ、悪いけどな…。自分は別に…人に教えられるような魔法は使えないぞ?」

上級魔導師というだけで、魔法の先生みたいに思ってるのかもしれないが。

全然、そんなことない。

俺、魔導師ではあるけど、教師ではないからな。

そういうことに関しては、学院長か羽久に頼んでくれ。

俺、人に教えるの向いてないんだよ。

自分でもよく分かってないからな。魔法の使い方なんて。

「そんなことはありません。キュレム様は、立派な上級魔導師様です」

「いや…。そういう問題じゃなくて…」

立派な上級魔導師様が、立派な魔法の教師とは限らないんだよ。

分からんかね。

「我々に教えを乞うより、魔導書の一冊でも読んだ方が、余程勉強になると思いますけど」

その通りだルイーシュ。よく言った。

稽古をつけるなんて、俺達、絶対向いてない。

それなのに、二人共引き下がることはなく。

「いいえ、私はルイーシュ様の専属見習い魔導師ですから。魔導書ではなく、ルイーシュ様に教えを乞いたいのです」

…期待に満ちた眼差しである。

「私は、キュレム様に教えていただきたいです」

…ブラマンジュちゃんまで。

…わっくわくじゃないか。

どうすりゃ良いんだよ。この空気。
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