神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
「こちらが、写し身様のお部屋になります」

私が案内されたのは、牢屋でも、コンクリート張りの密室でもなく。

豪華な調度品がたくさん置かれた、ぴっかぴかの、綺麗なお部屋。

「ほぇー…。…全部紫色だ…」

「こちらは、紫水晶の間になります」

ほぇー。

「キュレム様とルイーシュ様が王宮に滞在中も、こちらの部屋を使っていただいていたんです」

「そうなの?」

「はい」

そっか…。ここに、キュレムとルイーシュもいたんだね。

二人は今、えぇと、アーリヤット皇国?…って名前だった場所に行ってるんだっけ。

元気かなぁ…。

「何か必要なものがあれば、何でもおっしゃってください」

「そっか…。私は、ジュリスに傍にいて欲しい」

「それは…。…残念ながら、諦めてもらう他ありません」

「…そっかー…」

ジュリスは来ちゃ駄目なんだね。…そっか。

それは寂しいね。

じゃあ、私をルーデュニア聖王国に帰して、っていう頼みも、聞いてはくれないんだろうね。

「それ以外のご要望なら…可能な限りは」

それ以外かー…。…それ以外…。

「…じゃあ、私、パピッコが食べたいな」

「…は。ぱぴ…?」

知らないの?パピッコ。

パキッて真ん中で割って、二つに分かれるアイスだよ。

「パピッコのいちご味。食べたい」

「そ…そうですか。それが何だか知りませんが…探してみます」

「うん、お願い」

今はジュリスがいなくて、一人ぼっちだけど。

思い出のパピッコを食べたら、少しは元気が出るかなぁって、思って。

「では、失礼致します」

「…」

シディ・サクメは、ぺこりと頭を下げて。

客室…紫水晶の間…を出ていった。

…だだっ広い部屋の中に、一人ぼっちになる私。

…だけど、今の私は。

完全に、一人ぼっちになった訳じゃない。

「…クロティルダ。…いる?」

「…俺を呼んだか、我が姫」

ふわり、と一つ羽ばたいて。

私の目の前に、天使のクロティルダが姿を現した。

良かった。

クロティルダは、私の傍にいてくれるんだね。

「知ってる?クロティルダ。ここ、キルディリア魔王国、って国なんだって」

「あぁ。そのようだな」

「ジュリスがいないの。ジュリスもいないところに、私だけいるんだよ」

「…そのようだな」

…クロティルダがいてくれて良かった。

でなかったら私、多分…寂しくて泣いてた。

「なんで私、こんなところに連れてこられちゃったのかな」

「…それは」

「もう帰れないのかな…」

「…」

しょんぼり。

このまま、ずっとキルディリア魔王国にいたら。

ルーデュニア聖王国に、私の居場所はなくなって。

ジュリスも、私のことを忘れちゃうんだろうか。

…それは、きっと凄く寂しいね。
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