神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
すると。

半泣きのシルナを、不憫に思ってくれたのか。

「あの…。そこまでに…」

一部始終を見ていた天音が、勇敢にも。

おずおずと、イレースに意見をした。

勇気あるな、天音。

「学院長先生の言う通り…心配や緊張を解く為には、確かに甘いものを食べるのが効果的だから…」

じろっ、とイレースに睨まれても、めげずにシルナを庇おうとしている。

「別に、食べるなと言っている訳ではありません。糖分補給したいなら、わざわざチョコレートである必要はないでしょう。角砂糖でも舐めてなさい」

角砂糖って。

それはコーヒーとか、飲み物に入れるものだろうに。

「経費の無駄遣いです」

「そ、そんな!必要経費だよ、イレースちゃん。必要経費」

「何が必要経費ですか。あなたのチョコ代だけで、月にいくらかかってるのか、知ってるんですか?これ以上、私の頭痛の種を増やさないでもらえます?」

イレースの嫌味が止まらない。

ここぞとばかりに、青年の恨みを果たすように。

積もり積もった不平不満を、シルナにぶつけまくっている。

普段から、ストレス溜めてたんだなって。

なんか申し訳なくなってくるよ。イレースに。

「今月は、もう余分なチョコは買ってないでしょうね?」

「えっ、えっ?」

イレース裁判官に睨まれ、思わず目が泳いでいるシルナ。

…言えないよな?シルナ。

たった今、そこに…床に落とした、そのチョコレートこそ。

正しく、「余分なチョコ」である。

目を泳がせるシルナを、イレースはぎろっ、と睨んだ。

さながら、蛇に睨まれた蛙である。

「…まさか、また買ったんじゃないでしょうね?」

「ち、ちが。こ、これは、その、そう…。…も、もらいものなんだ!」

なんとか、イレースの怒りを逸らそうと。

シルナは、口から出任せ作戦を敢行した。

問い詰められて、追い詰められて、咄嗟に嘘をついてしまう。

シルナの悪癖だと思うぞ。

素直に認めた方が、まだ…。…いや。

相手がイレースの場合、素直に認めようと、言い訳しようと、どっちみち怒られるんだけどな。

「知り合いの…知人の…友達にもらったものなんだよ!」

…遠くね?

すると。

「成程、成程。そうでしたか。学院長」

「ひぇっ、ナジュ君!?」

待ってました、とばかりに。

ナジュが、ひょいっ、と姿を現した。

「『今月のチョコ予算はもうないけど、でも見るだけなら…』と、行きつけのチョコレート専門店を訪ねて、そこで『期間限定旬のフルーツチョコ詰め合わせセット』を発見したんですね」

「そ、そ、そ、それは!」

焦りまくるシルナ。

…に、ナジュは楽しそうに話し続けた。

「そこで、どうしてもそのチョコが欲しくなって、『イレースちゃんに怒られるかな…?…バレなきゃ大丈夫だよね!』と、こっそり来月分の予算から前借りをしてこうにゅ、」

「いやぁぁぁ!言わないでぇぇぇ!」

「もごもごもご」

シルナは慌てて、ナジュの口を塞ぐも。

…最早、時既に遅し、である。

息をするように人の心を読む、読心魔法使いのナジュに、隠し事は通用しない。

こうして、シルナの悪事は、見事に白日のもとに晒されたのであった。

悪は滅びるさだめなんだなーって。
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