神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
仲間達と別れ、俺達はキルディリア魔王国軍の本陣を目指した。

アーリヤット皇国市街は、死んだように静まり返っていた。

…まるでゴーストタウンのようだな。

幸いと言うべきか、今のところ戦闘音は聞こえない。

アーリヤット皇国では、各地でデモが起きていると聞いたが…。

この辺りは…まだ大丈夫、なのか?

「人、住んでるよな?ここ…」

「う、うん…。そのはずだけど…」

「それにしては…全然人の姿が見えな、」

その時だった。

「ひぇぇっ!?」

市街の各地に設置してある大きなスピーカーから、ガガガガ、とノイズが走る音がした。

ビビリのシルナはびくーっ!として、俺の背中をガシッ、と掴んできた。

ちょ、やめろって。

街頭のスピーカーって、知ってるか?たまに町内放送が流されるアレ。

あのスピーカーが、突然けたたましい音を立てた。

「な、何?何?何なのっ!?」

ビクビクのシルナ。

すると、ノイズを発していたスピーカーが、ようやく言葉を話し始めた。

『…え、します。繰り返します。ただいま、アーリヤット皇国全域に、外出禁止令が出ています』

えっ?

『全ての市民の皆さんは、家の外に出ることを禁止します。反乱の終結宣言が出るまで、危険ですので外に出ないでください。また、許可なく外出した者は、キルディリア総督府によって処罰を下します』

「…」

「…」

俺もシルナも、ぽかーん。

国民を宥めようとしているのか、それとも脅そうとしてるのか、どっちなんだ?

多分、どっちもだと思われる。

『繰り返します。ただいま、アーリヤット皇国全域に、外出禁止令が出ています…』

…壊れたラジカセみたいに、同じことを繰り返している。

外出禁止令…だと?

そんなものが出されてたのか。

非魔導師の夜間外出禁止令が出てたってのは、キュレム達から聞いていたが…。

今は、夜間じゃなくても、魔導師であっても、外出が禁止されているようだ。

成程、人っ子一人見当たらないのは、それが理由か。

「外出禁止令、って…。それじゃあ、アーリヤット皇国の人達は、チョコやケーキを買う為に外に出ることも出来ないってこと?」

「あぁ…そうなるな」

「そんな…!」

…まぁ、チョコやケーキは不要不急の外出だと思うから、なくても困らないだろうが。

…シルナ以外はな。

でも、必要な食料品や日用品を買う為だったり、病院に通ったりする為に、外出が必要な人もいるだろうに。

そういう人達も…家の中に閉じ込められているというのか?

そりゃ、内乱が起きている状態なんだから、危険なのは分かるが…。

でも、必需品を買う為に出掛けるくらいは、

「…お前達!そこで何をしている!?」

突然、背後から誰かの怒声が聞こえた。

「ひぇっ!?」

再び、シルナがびくーっ!として、俺の背中にしがみついてきた。

おい、その、ビビったら俺を盾にしようとする癖、やめろって。

で、一体何だ?

驚いて振り向くと、そこには。

鬼みたいな形相をした若い女性が、こちらを睨んでいた。

その女性は、俺達を睨みつけながら、つかつかと近づいてきた。

そして、女性が近づいてくるにつれて、あることに気づいた。

その女性が、首から下げているネックストラップ。

そこには、見覚えのある証明書が。

銀色の魔導師証明書が入っていた。
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