神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
その空き缶は多分、客が飲んで捨てていったジュースの空き缶だったのだろう。

ゴミ箱に捨てていたようなものまで、近くにあるものを、

キルディリア魔導師を追い払いたいばかりに、とにかくぶん投げたのだろう。

…で、その中の一つ…空き缶が、ベリクリーデにぶつかった。

思わず、「あっ!」と声が出そうになった。

止める暇も、庇う暇もなかったよ。

「べっ…ベリクリーデ、大丈夫か…!?」

「…?」

当のベリクリーデは、こてん、と首を傾げていた。

とぼけた顔してるってことは、どうやら、痛くはなかったようだ。

もし缶の中身が入っていたら、それだけでちょっとした凶器になり得るが。

幸い空き缶だった為に、それほどダメージはなかったらしい。

それどころか。

「…あ、ジュリス見て。これ、コラ・コーラの空き缶だよ」

自分にぶつかった空き缶を拾って、その特徴的な赤いパッケージを見て、そう言った。

そうだな。コラ・コーラだな。

でも、そんなことは今、どうでも良いからな。

「…この野郎!よくもやりやがったな」

俺、ブチギレ。

空き缶だったから良かったようなものの。中身が入ってる缶だったら、どうなっていたことか。

頭に血が上った俺は、人質がいるかも、とか。カラオケルームに残った客がいるかも、とか。まったく考えられなかった。

ベリクリーデに手出ししたらどうなるか、そして俺を怒らせたらどうなるか、教えてやる。

アーリヤット人だろうが、キルディリア人だろうか、関係ない。

重力魔法を使って、3階の窓までひとっ飛び。

「ひっ…!」

「いい加減にしろよ、お前ら。大人しく降りてこい!」

首根っこ掴まんばかりに、立てこもり犯を確保。

最初からこうすれば良かった。

「わー…。ジュリス、あっという間に捕まえちゃった…」

ベリクリーデもぽかん。

立てこもっていたアーリヤット人が、魔導師ではない、一般人であったことも幸いした。

「ったく、こいつら…!」

窓からモノを投げちゃいけません、って子供の頃教わらなかったのか。

と、説教くれてやろうとしたら。

そこに、ビルを取り囲んで、投降を呼びかけていたキルディリア人魔導師達がやって来た。

「おぉ…!どなたか存じませんが、立てこもり犯を捕まえてくれて、ありがとうございます。あなたはキルディリア魔王国の協力、」

「うるせぇ!元はと言えばお前らのせいだろ」

「へっ?」 

突然牙を剥かれ、呆けるキルディリア魔導師。

良いか。

今の俺にとっては、立てこもり犯だろうが、魔導師だろうが。

アーリヤット人だろうがキルディリア人だろうが、関係ないからな。

「お前らも大人しく、国に帰れ。喧嘩両成敗だ!」

「え、えぇぇぇ!?」

「…わー…。ジュリス、ぷんすか丸だ…」

ベリクリーデだけが、ぽかんとした顔で、成り行きを眺めていたのだった。
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