神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
こうして、また一つ、アーリヤット人とキルディリア魔王国軍のいさかいを、解決した訳だが。

「はぁ…。まったく、キリがないな…」

改めて、俺とベリクリーデは、後衛に設定した野戦病院…兼、司令本部に戻ってきた。

「あ、ジュリスさん。ベリクリーデさんも、お疲れ様」

そこには、天音が忙しそうに、右に左にと駆け回っているところだった。

よぉ。

「天音…そっちはどうだ?怪我人、増えてるか」

「そうだね…。増えてるけど、でも、重症者はほとんどいないんだ」

と、天音。

ほう。それは良いことじゃないか。

「逃げる途中に足を捻ったとか、転んで膝に擦り傷を負ったとか…。精々その程度で」

それなら…特に回復魔法は必要ないな。

足を捻ったら、湿布を貼るなり、冷やして、動かさないようにしていれば良いし。

ちょっとした擦り傷なら、消毒してガーゼでも当てておけば、特に問題はないだろう。

「あとは…意識のない人もいるんだけど、その人達は…」

「意識がない?…大丈夫なのか?」

「…うん、あれ…」

天音が指差した先には、仮設のベッドに横たわって、苦しそうに呻っている患者がいた。

おいおい、重症じゃないか…と思ったが。

「うぅ…。ぷ…りん、が…」

…は?

「プリンが…。大量の…プリンが〜…。…鼻に…」

「…」

水中をもがくように、苦しそうに身を捩っていた。

…はぁ、プリン。

…プリンね。

「…あれ、クュルナが運んできた患者か?」

「うん…。『幻覚を見せてるので、2時間くらい経ったら目を覚ますでしょう』って…」

「そうか…」

…クュルナお前、一体どういう幻覚を見せたんだ?

大量のプリンの海に溺れている幻覚でも、見ているのだろうか。

…軽くトラウマモノだな。

その患者に、ベリクリーデがにじり寄った。

「プリン美味しい?何プリンなの?」

「う、うぅ…。ふ、普通の…黄色い、たまごプリンが…」

「そっかー。カラメルかけて食べたら美味しいよね」

…こら。幻覚を見てる患者と、会話するんじゃありません。

「目を覚ました後、幻覚がトラウマになってなければ良いがな」

「あ、あはは…」

乾いた笑いの天音である。

…まぁ、一応無傷だから。怪我をしなかったことを喜ぼう。

あと、今後何があっても、クュルナを怒らせるのだけはやめよう。

俺は、心にそう堅く誓った。
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