神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
すると、そこに。

「まったく。キリがありませんね」

「あ、クュルナ…」

噂をすれば、本陣のテントの中に、クュルナが戻ってきた。

「あら、ジュリスさん。あなたも戻ってたんですね」

「お、おぉ…」

「…?なんで、ちょっと身構えてるんですか?」

いや、ごめん。何でもないんだ。

ちょっと、その…。…お前の幻覚魔法を恐れてる訳じゃないからな。

「な、何でもない…。それよりクュルナ、そっちの方は…」

「はい?」

「どうなってるんだ?反乱の鎮圧、進んでるか」

話を逸らそう。それしかない。

「えぇ。ついさっき、キルディリア魔王国軍の魔導師と揉めているアーリヤット国民を見つけて…」

「本当に?…大丈夫だったのか?」

「えぇ。まとめて幻覚魔法を見せて…。今、病院テントに運んできました」

クュルナが、テントの床に伸びている4、5人の人々を手で指した。

アーリヤット人、キルディリア人の区別なく、クュルナの幻覚魔法に成敗されたようだ。

「大丈夫?元気?」

ベリクリーデが、床に伸びている人々を、つんつんと指で突いた。

こら。

「た、助けてくれ〜…。よ、ようかんが…」

「よーかん?」

…羊羹?

「ようかんが…たくさんのようかんが…!」

「溢れかえらんばかりの…ようかん…」

「は、鼻に詰まっ…。ようかんが、鼻に詰まって…!」

…阿鼻叫喚なんだが?

これには、天音もドン引き。

手の施しようがない状態である。

クュルナ、お前…。一体何の幻覚を見せたんだ。

…と、聞きたかったが、恐ろしくて聞けない。

やっぱり、クュルナを怒らせたら駄目だな。

「ようかんは…ようく噛んで食べようね、なんちゃって」

「…ベリクリーデ、ドヤ顔やめなさい」

そんなしょーもないこと、言ってる場合じゃないんだよ。

「ともあれ、そろそろ定期連絡の時間ですから。ナジュさんに報告を…」

と、クュルナが言いかけたところに。

「あぁー、もう。疲れたぁ〜。手加減するの、すっごく疲れるよー」

「お前は疲れてないだろう。調節しているのは俺だ」

「だからー、ぶきっちょな無闇君の為に、私だって頑張ってるんだよ?その努力を讃えてよー」

「…重い。乗るな」

いつもの痴話喧嘩をしながら。

無闇と月読が、本部テントに戻ってきた。

おぉ…お前らも来たか。

月読は、無闇の後ろにぴったりとくっつき。

その背中に覆い被さるような形で、無闇と共に入ってきた。

元気そうで何より。

「二人共、大丈夫?怪我はない?」

二人を見るなり、天音が駆け寄った。

「私と無闇君は平気だよ。ねぇ?」

「あぁ。それより、怪我人の手当てを頼む」

無闇は、連れてきた数人の怪我人を、天音に見せた。

「怪我を負った人がいるの?」

「逃げる途中で、足を滑らせて擦り傷を負った怪我人だ」

「あ、そ、そっか…」

…ホッと、胸を撫で下ろす天音。

良かった。どうやら、重傷者はいないようだな。
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