神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
「よし、そうと決まれば全校生徒分のチョコプリンの調達を…」

「あのな、シルナ…。またそういうことをするから、イレースに怒られるんだぞ」

「そんなことないもん!チョコプリンは美味しいんだから、きっとイレースちゃんもゆるしてくれ、」

と、言いかけたその時。

突然、学院長室の扉が、勢いよく開けられた。

「学院長先生っ!」

「ひゃぁぁっ!ごめんなさいごめんなさいイレースちゃん。チョコプリンは悪くないんです〜っ!!」

ビビリのシルナは、慌てて頭を庇いながら喚いた。

そりゃ、チョコプリンは悪くないだろ。

そうじゃなくて。

「えっ?ちょ、チョコプリン…?」

「へ…?」

てっきり、学院長室に飛び込んできたのはイレースだと思っていた。

だが、違っていた。

恐る恐る、シルナが顔を上げると。

息を切らして学院長室に駆け込んできたのは、イレースではなく。

「しゅ、シュニィちゃん…?」

聖魔騎士団副団長の、シュニィだった。

…イレースじゃなかった。

「な、なぁんだ。良かった…シュニィちゃんだったんだね」

「は、はい…」

「驚いたよ。てっきりイレースちゃんが私を叱りに来たのかとおもっ、」

「私に叱られるようなことをしたんですか」

「ひぇぇぇぇ!?」

最悪のタイミングで。

シュニィの後ろから、しかめっ面のイレースが顔を覗かせた。

「ごめんなさいごめんなさい。許して〜っ!助けて羽久!」

俺に助けを求めるなよ。

危うく、シルナはイレースに一撃粉砕されるかと思われたが。

イレースは、じろり、とシルナを睨んだものの。

はぁ、と溜め息をついてから、こう言った。

「…一発ぶん殴ってやりたいところですが、今はそれどころじゃないみたいなので、黙っていてあげましょう」

…え?

「…どうしたんだ?イレース…」

珍しいこともあるじゃないか。お前が潔く引き下がるとは…。

今日は珍しいことばかりだな。

…いや、ちょっと待て。その前に。

「シュニィ…どうしたんだ?血相変えて」

「は、はい…」

俺は、突然、イーニシュフェルト魔導学院にやって来たシュニィに事情を尋ねた。

すると。

閉じていたはずの学院長室の窓が、カラカラ、と開けられ。

そこから、しゅたっ、と一匹の猫が飛び降りてきた。

「あ、マシュリ…」

いろり…猫の姿をしたマシュリである。

この時間は、いつも中庭で、猫好きの生徒達に遊んでもらっているはずだが…。

「どうした?マシュリ」

「シュニィの匂いがしたから、何かあったのかと思って」

あぁ、成程。

シュニィがやって来た匂いを嗅ぎ付けて、何事かと、学院長室までやって来たのか。

「それで、シュニィ…。一体何が、」

「アーリヤット皇国が…アーリヤット皇国が、降伏しました。無条件降伏です」

シュニィは血相を変えて、息を切らしながら。

青ざめた顔で、俺達にそう言った。
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