神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
キルディリア・アーリヤット戦争が終結した、二日後。

俺とシルナは、王宮の…フユリ様のもとを訪ねた。

ここ最近、ずっと浮かない顔のフユリ様だったが…。





「フユリ様…。…心中お察し致します」

「…ありがとうございます。シルナ学院長」

今日のフユリ様は、またかつてないほどに疲れた顔をしていた。

…それもそうだろう。

この二日間で、俺達はまた新たな情報を入手していた。

アーリヤット皇国の無条件降伏によって、両国の戦争は終わった。

キルディリア魔王国軍は、高々とキルディリアの国旗を掲げ、堂々とアーリヤット皇国の領土に上陸。

ナツキ様率いる旧アーリヤット政府は解体。キルディリアのイシュメル女王が樹立した、新政府による統治が開始された。

これらの動きは、非常に早かった。

キルディリアは、アーリヤット皇国の領土にさっさと上陸するなり。

さっさと新しい政府を樹立して、さっさとアーリヤット皇国を支配してしまったのだ。

抵抗する暇も、隙もないうちに。

瞬く間にキルディリア魔王国の占領下に入ったアーリヤット皇国の民は、逃げることはおろか。

多分、心の準備すら出来ないままに、あっという間に国を滅ぼされたのである。

アーリヤット皇国民の混乱と動揺を思うと、非常に心苦しい。

イシュメル女王は、何もかも周到に用意していたのだろう。

どうやってアーリヤット皇国を征服し、どうやって支配するか。

そして、その通りに実現してみせたのだ。

恐ろしいと言う他ない。

アーリヤット皇国は、罠に嵌められた獲物のように、なす術なくイシュメル女王の手のひらの上で…。

「アーリヤット皇国は…このまま、キルディリア魔王国の植民地にされてしまうのでしょうか」

「そうですね…。それでもアーリヤット皇国では、各地で反乱やデモが起きているようです」

…それもそうだろう。

突然国を支配されて、黙っていられるはずがない。

当然、たくさんの国民達が、キルディリアの支配に反発している。

「しかし…それらの反対運動は、キルディリア魔王国軍によって、ことごとく鎮圧されているそうです」

「そんな…。キルディリア魔王国は、アーリヤット国民を力で支配しようと言うのですか」

「はい…。キルディリア国軍占領後、既に数多くの死傷者が出ているとか…」

「…」

…なんということを。

力でアーリヤット皇国に押し入り、力で国民を支配する。

そんなやり方では…。余計に、多くの血が流れるだけだ。

「更に…キルディリア魔王国軍は、アーリヤット皇国内の魔導師達を扇動し…。非魔導師の一般国民を支配させているということです」

何だって?

魔導師を優遇し、非魔導師を弾圧する。

キルディリア魔王国で行われている…キルディリアの骨子とも言える国策である。

それを、アーリヤット皇国でも実践するつもりなのか?

「元々アーリヤット皇国では、兄の方針により、魔導師の立場はとても低かった…。当然アーリヤット皇国の魔導師は、不満を溜め込んでいたことでしょう」

「ならば…魔導師を優遇するキルディリア魔王国の進駐は、アーリヤット皇国の魔導師達にとっては僥倖ですね」

これまでアーリヤット皇国の魔導師達は、魔導師嫌いのナツキ様の支配下で、辛酸を舐めさせられてきた。

しかし、キルディリア魔王国はナツキ様の方針とは正反対に、魔導師を厚遇する政策を取っている。

そうすると、アーリヤット皇国の魔導師達は、これまでの扱いとは一転。

彼らにとっては、ようやく自分達の理解者が現れた、というところだろう。
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