豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
襲来
「――――、橘!?」
振り向いた先にいた思いがけない人物を見つけ、頭が真っ白になる。
何でいるのよ……
何週間と通いつめても見かけることがなかった彼が、目の前にいる。信じられない光景を受け止めきれない。
わずかな期待を抱き、このBARへと通っていた。最悪な想い出しかないこの場所が、いつの間にか橘真紘と私を繋ぐ大切な場所へと変わっていた。
フラッと現れるのではないかと期待する自分と、来る筈がないと思う自分とのせめぎ合いは、橘真紘は現れないと、いつしかあきらめの気持ちに支配されていった。
それなのに、何で今日なのよ。
こんな姿、見られたくなかった。元彼との関係を精算し、綺麗さっぱり身軽になるつもりが、逆に追いつめられている。しかも、元彼に肩を抱かれている現状は、側から見れば恋人同士に見えるだろう。
しかし、驚きで元彼の手を振り払うことも出来ず、ポカンと橘を見つめる。
あぁぁ、このまま全てから逃げ出せたらどんなに楽だろうか。
そんなことをぼんやり考えていた私の耳に不機嫌そうな橘の声が入った。
「そろそろ、その手退けてくれますか? 自分の彼女が他の男に触られているとムカつくんで」
「「……はっ? 彼女!?」」
元彼と見事にハモった疑問符に、さらに頭が混乱する。
今、私のことを彼女と言ったの??
意味がわからない。
「そうです。貴方が肩を抱いている女性、俺の彼女ですよ。鈴香さんから聞いていませんか? その様子では、聞いていないようですけど」
「はぁあ!! 嘘も休み休み言え。誰に頼まれたか知らねぇが、鈴香に彼氏がいないことは知ってんだよ。会社の後輩か何かかぁ? どうせ、コイツに頼まれて彼氏のフリでもしてんだろう? なぁ、鈴香。彼氏でも連れてくれば、俺があきらめるとでも思ったのか? 本当、考えが浅はかだよな。お前に、こんな顔だけいい年下の男、出来るわけないじゃん」
隣で喚き散らしている元彼の言葉も耳に入らず混乱する。とにかく、今の状況を整理しなければならない。このまま、訳も分からず固まっているわけにはいかない。
振り向いた先にいた思いがけない人物を見つけ、頭が真っ白になる。
何でいるのよ……
何週間と通いつめても見かけることがなかった彼が、目の前にいる。信じられない光景を受け止めきれない。
わずかな期待を抱き、このBARへと通っていた。最悪な想い出しかないこの場所が、いつの間にか橘真紘と私を繋ぐ大切な場所へと変わっていた。
フラッと現れるのではないかと期待する自分と、来る筈がないと思う自分とのせめぎ合いは、橘真紘は現れないと、いつしかあきらめの気持ちに支配されていった。
それなのに、何で今日なのよ。
こんな姿、見られたくなかった。元彼との関係を精算し、綺麗さっぱり身軽になるつもりが、逆に追いつめられている。しかも、元彼に肩を抱かれている現状は、側から見れば恋人同士に見えるだろう。
しかし、驚きで元彼の手を振り払うことも出来ず、ポカンと橘を見つめる。
あぁぁ、このまま全てから逃げ出せたらどんなに楽だろうか。
そんなことをぼんやり考えていた私の耳に不機嫌そうな橘の声が入った。
「そろそろ、その手退けてくれますか? 自分の彼女が他の男に触られているとムカつくんで」
「「……はっ? 彼女!?」」
元彼と見事にハモった疑問符に、さらに頭が混乱する。
今、私のことを彼女と言ったの??
意味がわからない。
「そうです。貴方が肩を抱いている女性、俺の彼女ですよ。鈴香さんから聞いていませんか? その様子では、聞いていないようですけど」
「はぁあ!! 嘘も休み休み言え。誰に頼まれたか知らねぇが、鈴香に彼氏がいないことは知ってんだよ。会社の後輩か何かかぁ? どうせ、コイツに頼まれて彼氏のフリでもしてんだろう? なぁ、鈴香。彼氏でも連れてくれば、俺があきらめるとでも思ったのか? 本当、考えが浅はかだよな。お前に、こんな顔だけいい年下の男、出来るわけないじゃん」
隣で喚き散らしている元彼の言葉も耳に入らず混乱する。とにかく、今の状況を整理しなければならない。このまま、訳も分からず固まっているわけにはいかない。