豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
「私も考えが甘かった。まさか、待ち伏せされるとは思っていなくて。付き合っていた時は、私に執着するようなタイプじゃなかったのよ。実際、何度も浮気されていたしね。最後なんて、何ヶ月も放置されていたわよ。電話しても、メールしても忙しいの一言だけ。そんな男よ、すぐ諦めると思っていたのに……。えっ? 何、私なんか変なこと言った?」

 隣に座った橘が盛大なため息をつき、心底呆れたと言わんばかりの顔をして、こちらを見ている。

「本当、何も分かってないのなぁ……。男って生き物は簡単に手に入るモノには興味を示さない。まぁ、言い換えれば釣った魚にはエサをやらんとも言うか」
「えっ? そういうモノなの?」
「あぁ。元彼は浮気性だったんだろ? その傾向は顕著だ。何度浮気しようと、最後には受け入れてくれる鈴香の存在は、奴にとったら水槽で飼われている魚と同じ。極限まで放置していても逃げられる心配がない都合の良い女だった」

 都合が良い女……
 心当たりがあり過ぎて何も言えない。

「ただ、浮気を繰り返す内に欲が出たんだろうな。鈴香は、どこまでなら許してくれるのかって。本心では別れるつもりなんて無かったんだろうよ。別れた後、直ぐに縋りついて来ると思っていたんじゃないかな」
「確かに、今までの私ならヨリを戻したいと縋っていたかもしれない……」

 橘と出逢っていなければ。

「しかし、実際はいつまで経っても連絡すら来ない。思惑は外れ、我慢の限界が来て自らメールをした。きっと直ぐにヨリを戻せると思っていた。何度浮気しても許してくれる鈴香なんだから大丈夫だと。それすら叶わなかった時、豹変したんだろうな。自分の手の内にいた女だからこそ、見捨てられた時の衝撃は計り知れない。ストーカー化してもおかしくないと思うぞ。実際、完全にストーカー化しているしなぁ、鈴香の元彼」
「左様ですか……」

 にわかに信じられない話だったが、実際に待ち伏せされ、襲われた事実が橘の話が真実だと物語っていた。
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