豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
「今だからネタバレするけど、元彼がストーカー化しているって、橘君に情報を流したのも私です。勝手にって言われるかもしれないけど、正直あの時、鈴香危なかったのよ。知らないと思うけど、何回か待ち伏せされていたのよ。定時で帰っていたから、表立って行動されなかったけど、あの日は久々に残業もしてたし、ヤバいかなって。だから、橘君に連絡したのよ。元彼が行動起こすかもって。後で彼から状況聞いて血の気が引いた。大丈夫だったのよね?」
「えぇ。橘が助けてくれたから……」
「良かった。橘君に連絡して良かったわ。ただ、鈴香に内緒で裏で色々とやっていたのは事実だから、本当ごめんね」

 元彼に襲われた日、タイムリーに橘が助けに来たのには、そんな裏があったのかと、頭を下げて謝る明日香を見つめ思う。
 裏事情を知れてよかった。
 橘の言葉が真実だったと信じたい気持ちが、心に芽生え始める。

「いいの。もし、明日香が橘に伝えてくれなかったら、元彼に襲われてズタズタにされていたと思うし、こちらこそありがとう」
「そう、良かった。でも、内緒で色々していたのは事実だし、本当ごめんね。それで、元彼のストーカー行為ってどうなったの? その後は、無くなった?」
「えぇ。まぁ……」

 あの日以来、元彼から連絡が来る事は一切なくなった。ただ、あまりの静けさが逆に不気味に感じる。あのまま私に見切りをつけてくれたと考えていいのだろうか。

「まっ、何かあっても橘君が守ってくれるし、大丈夫かな。一緒に暮らしているんでしょ?」

 明日香の言葉に一瞬驚くが、橘の協力者なら同居の件も知っていて当然かと、大きなため息を吐き出す。
 彼女の言う通り、まだ橘の心に私がいるのなら、ストーカーと化した元彼から守ってくれるのだろう。ただ、橘の心にいるのが私ではなく、元彼女、吉瀬美沙江だったら……
 一度、巣喰った不信感は、そう簡単には拭えない。そして心に宿った疑心暗鬼は、吉瀬美沙江の営業部への出向が決まり、確信へと変わった。
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