豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
「えっ? ちょっ、と……」
「黙って聞いてくれる。俺の片想い――、冬野、お前なんだよ」
いつものふざけた調子ではない静かでいて深みのある低い声に心臓が跳ねる。
「はは、まさか。また、冗談を……」
「冗談で、こんなことしない。ずっと、好きだった。たぶん、同期として入社した頃から」
キュッと腕の力が強まり身動きが取れない。トクトクとなる心臓の音が頭に響き、じんわりと身体を熱くさせた。
「判断は的確で、仕事も早い。それでいて他人へのフォローも完璧。始めはライバル視していたんだ。でも、なんか冬野って抜けてんだよな。そこが見放せないって言うか、ほっとけないっていうか、いつの間にか目で追うようになっていた。でも、恋に気づいたのは元彼との愚痴を聞くようになってからか。なんで、そんな男と付き合ってんだ。俺の方が幸せに出来るのにってね」
静かな声で紡がれる言葉が、心に降り積もっていく。彼はずっと自分を見てくれていた。己の心を隠し、ずっと側で支えてくれていた。
「なぁ、冬野。お前が今、どういう状況かは知らない。でも、仕事の鬼のお前が、精神的に追いつめられていることだけはわかる。辛い恋しているなら、そんなもの捨てて、俺の手を取らないか」
スッと離れた須藤課長が手を差し伸べる。
誠実で、誰からも頼りにされる素敵な人。きっと、この手を掴めば、私は幸せになれる。
頭では、わかっている。でも、心が彼の手を掴むことを良しとしない。
いつの間にか、大きくなっていた存在。女を弄ぶような男で、クズ中のクズ。だけど、瞳の中に隠された空虚な心に惹かれた。
心の中に居座り続ける『橘真紘』という存在が、須藤課長の手を取ることを良しとしない。
本当、馬鹿よね。
須藤課長の手を取れば幸せになれるって、わかっているのに……
「須藤課長……、ごめんなさい」
深々と頭を下げる。
想い続けてくれた彼への罪悪感で心が押しつぶされそうに痛い。涙があふれそうになるが必死に堪える。ここで泣くわけにはいかない。
泣くのは簡単だ。でも、それは自分勝手な逃げでしかないから。
「そうか……、冬野、お前ならそう言うと思ったよ」
「えっ……?」
「いや、勘違いするなよ。お前を好きだって言った言葉は本心だ。ただ、冬野なら断るだろうなって、内心思っていた。変なところで頑固だからな、お前って」
須藤課長の言葉に顔を挙げれば、ホッとした表情の笑顔とぶつかる。
「これで、冬野に振られるのは二回目かぁ」
「えっ? 二回目?」
「はっ!? お前、覚えてもいないのかよ」
「覚えているって、何を?」
額に手を当て項垂れる課長を見て、頭の中が疑問符で埋め尽くされる。
「あぁぁ、冬野は知らんでいいよ。というか俺の存在って、お前にとってその程度だったんだと再認識する羽目になろうとはなぁ」
心底呆れたという目を向けられ何故か頭に血が上る。
「はぁ? どういう事ですか!? その目、完全にバカにしてますよね! 話すまで帰しませんよ!!」
「はぁぁ、わかったわかった。話すから離せって!」
須藤課長への罪悪感も忘れ掴みかかっていた手を慌てて離し、距離をとる。
「黙って聞いてくれる。俺の片想い――、冬野、お前なんだよ」
いつものふざけた調子ではない静かでいて深みのある低い声に心臓が跳ねる。
「はは、まさか。また、冗談を……」
「冗談で、こんなことしない。ずっと、好きだった。たぶん、同期として入社した頃から」
キュッと腕の力が強まり身動きが取れない。トクトクとなる心臓の音が頭に響き、じんわりと身体を熱くさせた。
「判断は的確で、仕事も早い。それでいて他人へのフォローも完璧。始めはライバル視していたんだ。でも、なんか冬野って抜けてんだよな。そこが見放せないって言うか、ほっとけないっていうか、いつの間にか目で追うようになっていた。でも、恋に気づいたのは元彼との愚痴を聞くようになってからか。なんで、そんな男と付き合ってんだ。俺の方が幸せに出来るのにってね」
静かな声で紡がれる言葉が、心に降り積もっていく。彼はずっと自分を見てくれていた。己の心を隠し、ずっと側で支えてくれていた。
「なぁ、冬野。お前が今、どういう状況かは知らない。でも、仕事の鬼のお前が、精神的に追いつめられていることだけはわかる。辛い恋しているなら、そんなもの捨てて、俺の手を取らないか」
スッと離れた須藤課長が手を差し伸べる。
誠実で、誰からも頼りにされる素敵な人。きっと、この手を掴めば、私は幸せになれる。
頭では、わかっている。でも、心が彼の手を掴むことを良しとしない。
いつの間にか、大きくなっていた存在。女を弄ぶような男で、クズ中のクズ。だけど、瞳の中に隠された空虚な心に惹かれた。
心の中に居座り続ける『橘真紘』という存在が、須藤課長の手を取ることを良しとしない。
本当、馬鹿よね。
須藤課長の手を取れば幸せになれるって、わかっているのに……
「須藤課長……、ごめんなさい」
深々と頭を下げる。
想い続けてくれた彼への罪悪感で心が押しつぶされそうに痛い。涙があふれそうになるが必死に堪える。ここで泣くわけにはいかない。
泣くのは簡単だ。でも、それは自分勝手な逃げでしかないから。
「そうか……、冬野、お前ならそう言うと思ったよ」
「えっ……?」
「いや、勘違いするなよ。お前を好きだって言った言葉は本心だ。ただ、冬野なら断るだろうなって、内心思っていた。変なところで頑固だからな、お前って」
須藤課長の言葉に顔を挙げれば、ホッとした表情の笑顔とぶつかる。
「これで、冬野に振られるのは二回目かぁ」
「えっ? 二回目?」
「はっ!? お前、覚えてもいないのかよ」
「覚えているって、何を?」
額に手を当て項垂れる課長を見て、頭の中が疑問符で埋め尽くされる。
「あぁぁ、冬野は知らんでいいよ。というか俺の存在って、お前にとってその程度だったんだと再認識する羽目になろうとはなぁ」
心底呆れたという目を向けられ何故か頭に血が上る。
「はぁ? どういう事ですか!? その目、完全にバカにしてますよね! 話すまで帰しませんよ!!」
「はぁぁ、わかったわかった。話すから離せって!」
須藤課長への罪悪感も忘れ掴みかかっていた手を慌てて離し、距離をとる。