大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
(夢で泣くなんて、最悪)

 今日は月曜だが、美空は休みだ。瞼が腫れぼったくても、慌てて冷やす必要はない。
 といっても、せっかく久しぶりにのんびり過ごすつもりでいたのに、寝覚めが悪い。それもこれも、珍しく昔のことを夢に見たせいだ。
 そもそも、あんな夢を見たきっかけは昨夜送られてきたメッセージのせいに違いなかった。
 美空はのろのろと起きあがり、スマホをタップする。メッセージアプリに表示されたのは、一枚の写真だった。

「こんなものを、送ってくるから……っ」

 コクピットから窓の外を写したと思われる一枚だ。
 滑走路が写りこんでいるから、着陸後……降機する前に撮ったものだろう。
 どこまでも果てがなさそうな地平に、朝日が染み渡る瞬間を捉えたものだった。きりきりと張りつめたような澄んだ空気さえ、まるでその場にいるように感じられる。
 息をのむほど、うつくしかった。
 特定の神を信仰していなくても、思わずなにかに感謝を捧げたくなるような。

【AP45便から見た景色。どう?】

 写真とともに送られた短いメッセージをぼんやりと読み返す。APはエアプラス社のツーレターコードだ。
 AP45便は、各航空会社の機体のうち朝もっとも早く新千歳空港に着陸する便である。朋也は相当早起きしたに違いない。
 使用機材はB737。エアプラス社のパイロットがまず始めに免許を取得する機種だ。主に国内線で使用されている。
 十月下旬の新千歳ともなれば雪が降り始めるころだが、昨日はよい天気だったようだが。

(【どう?】じゃないわよ、ひとの気も知らないで)

 昨夜届いたそのメッセージを一読したきり、返信する気にはどうしてもなれなかった。
 取り澄ましているが、傲慢さがちらちらと覗く。外面はいいが自己中心的で、ひとの話を聞かない男。
 美空から見れば、難点だらけの男。
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