大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
 到着ラッシュも過ぎて社員も減り、夜更け特有の間延びした雰囲気のオペセンに朋也が足を踏み入れると、フロア内がざわついた。
 制服を着たままなのだから、なにしろ目立つ。パイロットがオペセンに入る機会はないといってよいので、なおさらだ。
 しかし朋也は、自分に向けられる好奇の視線を無視してフロア内を見回す。
 美空の業務の邪魔をするつもりはない。ただ、着信すら拒否されている状況では、オペセンまで来なければ話もできないだろうと踏んでいた。
 せめて顔を見てひと言だけでも――なにか爪痕を残したい。あれきりで終わりにはさせないと、知らしめたい。
 しかし、美空の姿が見当たらない。
 手の空いていた男性社員を捕まえて尋ねると、今日は出勤していないという。

「それはオフということ? それともこれから出勤? 明日は?」
「そこまでは……木崎さんの勤務予定なら、あそこ、アジア路線の区画にいる瀧上さんに訊いてください」

 弱った顔で示された一帯に目をやれば、なるほどアジア路線担当を示すプレートが天井から下がっている。
 その真下の席に、あの男がいた。
 隣の席の若手男性社員と雑談中らしい。瀧上のサポートについている運航支援者だろう。
 朋也の口から美空の名前が出たことで、彼女が失敗でもしたのかと周囲がどよめいた。朋也が怒りのあまり殴りこみに来たと、勘違いされているようだ。
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