大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
「それじゃ答えになってません。それに、名前だって――」
「初めて見たときから、いい名前だと思っていたんだ。名前で呼ばせてよ」
「ぅ、いい、ですけど……」

 頬が熱いのは風邪のせいなのか、それともほかの理由なのか。

「ありがとう」と言った朋也が、困惑の抜けない美空を見て口元をゆるめた。

「そんなに理由が気になるなら、説明しようか。話すための時間をくれってことは、会いたいという意味だよね。そのくせ、返信はスルーされるわ電話には出ないわ、あげくなにに対する謝罪なのかもわからないメッセージが来るわで、最後は電源も切られていた。意味がわからなかったね」
「そ、それはすみません……! 違うんです、それは」

 こうして並べ立てられると、われながら感じの悪さに頭を抱えてしまう。
 慌てる美空の体調を気遣ってか、朋也が話さなくていいと手振りで遮る。

「だけど瀧上さんから美空が風邪だと聞いて、一連の拒絶は……すべてではないにしても、俺のためでもあるんじゃないかと思った」
「……っ」
「一度そう思ったら、たしかめずにいられなくてここまで来ていた。前に送ったときに家の場所は知っていたから、道に迷わなくて助かったよ」

 朋也が見せる表情は意外にもやわらかかった。ほんの少しいたずらっぽい笑みも覗いている。
 なんだか見てはならない――甘く密やかなものを見てしまったように思い、美空はうつむいた。
 この笑みを勘違いしたら、なにかが……後戻りできなくなる気がする。
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