大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
「それでいてもたってもいられずに来たら、美空は俺に帰れという。でも風邪が移るからと聞こえたから、居座ることにした」
「どうしてそうなるんですか……」

 ベッドの端に腰かけて爽やかに話す朋也は、私服に着替えている。ほんとうに一度帰宅して、また来たらしい。
 シンプルなカットソーのラフな感じを、細身の黒パンツが引きしめている。何度見ても足が長い、ととりとめのないことを思う。

「だって、俺のためだったよね? 会いたいと言いながら断ったのも、俺を帰らせようとしたのも」
「……違います」
「強情だな」

 眉をひそめる朋也に、美空は「違うの」と繰り返した。

「断ったんじゃなくて。今は無理だけどまた連絡するって……そこまで続ける気力がなかったですけど」
「ああ、そういうこと? ほかに否定するところはある?」

 言葉に詰まり、観念して首を横に振る。と、朋也が小さく笑って手を伸ばしてきた。びくっと肩をすくめる。
 すらりとした指の背が、頬をそっと滑っていった。

「火照りも収まったみたいだ。あとは体調が戻ったら……なにを話すつもりだったのか、聞かせて」
「わかり、ました」

 病院に行く前にひと眠りするよう勧められ、美空はその優しい響きに抗えず、ベッドに沈んだ。
 起きても朋也がいてくれるらしいことに、自分でも驚くほど安堵している。
 まずは先日の件を謝るとして、そのほかに朋也へしてあげられそうなことを頭に浮かべながら。
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