もう一度 恋をするなら
塾の帰り、冬の夜は遅くなるのがとても早くて、いつも六時過ぎでも真っ暗だった。夜道が怖くて母親に電話しても、機嫌が悪くて迎えに来てくれないことが度々あった。
その日もいつものように「自分のことなんだから自分で帰ってきなさいよ!」と金切り声で怒られて、仕方なく夜道を歩いていた。早歩きで道を急いでいた時、後ろからコンビニ帰りらしい彼が声をかけてくれたのだ。
「今井さん?」
ビニール袋を手に持った弓木くんを見て、心底安心した。
「おつかれ。塾帰り?」
「弓木くん……! よかったー! 帰るんだよね? 一緒に歩いて、お願い!」
「もちろんだけど……あ、カフェラテいる?」
「いいの? あ、お金払う」
「いいって。夕飯代の残りで買っただけだし。俺が飲んだことにするから」
そう言って、温かいカフェラテのペットボトルを手渡してくれた。二本買ってあったらしくて、一本ずつ持って手を温めながら並んで歩く。
「二本って、もしかしてお父さんの分じゃないの?」
「あー、そう。つい親父いるつもりで二本買っちゃったけど、今日は夜勤でいないんだよ。だから気にしないで」
「そう? あったかいから嬉しいけど……」
「今井さんは、塾の帰りはいつも歩き?」
「んー、いつもじゃないよ、時々」
小さな頃から母親は一度怒り出すと止まらないことが多くて、私にとっては日常だった。けれど、それが当たり前じゃないとわかってきたのは小学校の高学年だったか。周りの友達の母親と比べるようになって「ちょっとうちのお母さんは変じゃない?」と気付いてしまった。
母の怒鳴り声が時々周囲の部屋に聞こえていることは知っていたので、もはや隠す意味もないのだけれど恥ずかしくて言葉を濁してしまう。
その日もいつものように「自分のことなんだから自分で帰ってきなさいよ!」と金切り声で怒られて、仕方なく夜道を歩いていた。早歩きで道を急いでいた時、後ろからコンビニ帰りらしい彼が声をかけてくれたのだ。
「今井さん?」
ビニール袋を手に持った弓木くんを見て、心底安心した。
「おつかれ。塾帰り?」
「弓木くん……! よかったー! 帰るんだよね? 一緒に歩いて、お願い!」
「もちろんだけど……あ、カフェラテいる?」
「いいの? あ、お金払う」
「いいって。夕飯代の残りで買っただけだし。俺が飲んだことにするから」
そう言って、温かいカフェラテのペットボトルを手渡してくれた。二本買ってあったらしくて、一本ずつ持って手を温めながら並んで歩く。
「二本って、もしかしてお父さんの分じゃないの?」
「あー、そう。つい親父いるつもりで二本買っちゃったけど、今日は夜勤でいないんだよ。だから気にしないで」
「そう? あったかいから嬉しいけど……」
「今井さんは、塾の帰りはいつも歩き?」
「んー、いつもじゃないよ、時々」
小さな頃から母親は一度怒り出すと止まらないことが多くて、私にとっては日常だった。けれど、それが当たり前じゃないとわかってきたのは小学校の高学年だったか。周りの友達の母親と比べるようになって「ちょっとうちのお母さんは変じゃない?」と気付いてしまった。
母の怒鳴り声が時々周囲の部屋に聞こえていることは知っていたので、もはや隠す意味もないのだけれど恥ずかしくて言葉を濁してしまう。