もう一度 恋をするなら
「仕方ないよね、お母さんひとりだし忙しそうだし。なるべく洗濯とか掃除とか手伝うようにはしてるんだけど……弓木くんちは? お父さんとふたりだと家事とか大変じゃない? 夕飯とかはお父さんが作るの?」
「親父も作るし、俺も作るよ。あんまうまくないけど」
「えらいじゃん! うまくないのはどっち?」
「親父。あの人味オンチなんだよなあ。その上、不味いって言ったら本気で拗ねるし。それで時々けんかになんの。大人げねえ大人だろ」
そんな風に言いつつ、彼のところは親子仲がいい。お母さんは弓木くんの小さいころに亡くなって、顔も写真や映像でしか知らないといっていた。一緒にいるところを時々見かけたけれど、屈託なく笑う弓木くんの顔を見ただけで、なんとなくそれは伝わるものだ。親子で支え合って、思い合っている。
「仲良しなんだね」
羨ましい、という気持ちは押し込めたつもりでも滲み出てしまった気がして、弓木くんの顔は見られなかった。だけど、横から視線はずっと感じていた。
「今井さん、良かったらスマホの番号交換しようよ」
「え、いいの?」
家の前に着いた時、そう提案されてうれしかった。バレたら女子のやっかみが怖いけど、この頃は中学生でスマホを持っている子は少なかったから、わざわざ話題になることもないだろうと思った。
「うん。塾とか、塾じゃなくても夜道歩くとき連絡くれたら、俺行くし」
「えっ、いや、それはさすがに」
「どうせ俺、夜によくコンビニ行くし」
「夜、っていうか夕方に近いけど」
「冬は真っ暗なんだから夜だろ、屁理屈」
お互いの家のドアの前で笑い合って、それからスマホを取りだした。男の子と番号を交換するのは初めてで、すごくどきどきしたのを覚えている。
だからその後、機嫌の悪い母親のいる部屋のドアを開けるのも、それほど苦にならずに済んだ。
「親父も作るし、俺も作るよ。あんまうまくないけど」
「えらいじゃん! うまくないのはどっち?」
「親父。あの人味オンチなんだよなあ。その上、不味いって言ったら本気で拗ねるし。それで時々けんかになんの。大人げねえ大人だろ」
そんな風に言いつつ、彼のところは親子仲がいい。お母さんは弓木くんの小さいころに亡くなって、顔も写真や映像でしか知らないといっていた。一緒にいるところを時々見かけたけれど、屈託なく笑う弓木くんの顔を見ただけで、なんとなくそれは伝わるものだ。親子で支え合って、思い合っている。
「仲良しなんだね」
羨ましい、という気持ちは押し込めたつもりでも滲み出てしまった気がして、弓木くんの顔は見られなかった。だけど、横から視線はずっと感じていた。
「今井さん、良かったらスマホの番号交換しようよ」
「え、いいの?」
家の前に着いた時、そう提案されてうれしかった。バレたら女子のやっかみが怖いけど、この頃は中学生でスマホを持っている子は少なかったから、わざわざ話題になることもないだろうと思った。
「うん。塾とか、塾じゃなくても夜道歩くとき連絡くれたら、俺行くし」
「えっ、いや、それはさすがに」
「どうせ俺、夜によくコンビニ行くし」
「夜、っていうか夕方に近いけど」
「冬は真っ暗なんだから夜だろ、屁理屈」
お互いの家のドアの前で笑い合って、それからスマホを取りだした。男の子と番号を交換するのは初めてで、すごくどきどきしたのを覚えている。
だからその後、機嫌の悪い母親のいる部屋のドアを開けるのも、それほど苦にならずに済んだ。