もう一度 恋をするなら
だけどそれは、確かにふたりのことを思うとよくなかったのかも――。
ごめんなさい、と謝罪の言葉を絞り出そうとした時だった。
「それの何が悪いの?」
「えっ?」
はっきりとした声で、心底不思議そうな聞き方だった。なぜか教室内の誰の声よりも大きく聞こえて、全員が声のした方を見る。
弓木くんだった。
「俺、さっきから聞いてたけど全然わかんないんだけど。自慢話が多けりゃ反応に困るのは誰でもそうじゃねえ? 無視されたら気分悪いのは確かだし、気のせいかもしれないのも理由があるかもしれないのも間違いじゃない。今井さんは普通のこと言っただけだろ」
「で、でもどっちにもいい顔したのは間違いないだろ!」
「そんなん、別々に言われたら俺だって同じような返事になるわ。お互い相手のいないとこで愚痴ってたってことだろ。言いたいことありゃ本人に言えばいいのに」
しん、と静まり返った教室。当事者はもちろん言葉に詰まって、他のクラスメイトもみんな気まずそうに顔を見合わせていた。
そんな中、弓木くんだけがずんずんと真ん中まで進み出て、何をするのかと思ったら友達の彼氏の肩に思い切りよく片腕を回した。
「だから今いいタイミングだろ! そんでお前彼氏なんだから仲裁しろ!」
「えっ! え? 俺が?」
「そりゃそうだろ。っていうか、自慢したくなるような彼氏って思われてんだな。よかったな」
「え、お、おお……まあ」
ばんばんと肩を叩きながら弓木くんが笑顔でそうからかって、そうしたら今度はその笑顔がクラス中に伝染していく。くすくすとカップルのふたりをからかうような雰囲気になって、周囲もほっとしたのがわかった。
――弓木くん、すごい。
私は泣きそうだったことも忘れて、すっかりクラスの雰囲気を洗い流してしまった弓木くんの笑顔に釘付けとなっていた。