もう一度 恋をするなら
一番近い駅まで徒歩三分、そこから電車で三駅およそ十分間乗ってから病院まで徒歩十分。急げば七分くらい。職員寮にいた時よりは遠いけど、三十分以内の通勤時間なら充分許容範囲だ。駅前で商業施設が入った複合型のマンションなので、買い物するにも銀行に行くにも便利な所だった。部屋はリビングダイニングの他には寝室に使っている一部屋だけで、コンパクトなのもいい。掃除に手間がかからない。
今日も日勤だ。顔を洗い、朝食の準備をする。朝ごはんにトーストと目玉焼き、インスタントのコーンスープは考えなくて済むので毎朝の定番だ。流れ作業のように朝のルーティンをこなして、コーヒーを飲む時間を減らせばいつもと同じ時間に部屋を出ることができた。
職場では案の定、弓木くんのことが若い看護師を中心にもちきりとなった。高校生の頃から容姿はよかったけれど、そこに大人の男性特有の精悍さも感じられて一層格好よくなっていたので、致し方ないところもあるな、と思う。タイミング悪く出会えなかった人が、特に中川さんが思い切り食いついていた。
「わたしも見たかった! なんで今日も夜勤なの!」
そればっかりは、シフトが決まっているので仕方がない。彼女が弓木くんに遭遇したのは、五月に入ってからだったらしい。
そもそも、MRはしょっちゅう病院を訪れるものではない。MRとは日本語では医薬情報担当者といい、医師や薬剤師など医療従事者に向けて自社の医薬品に関する情報提供を仕事としている。もちろん取り扱いを依頼する営業活動でもあるのだが、症例や副作用の新情報などをいち早く知らせてくれたり医療現場には欠かせない人材だ。
当然、MRひとりで複数の病院を担当しているし、他の仕事もあるので病院周りだけをしているわけにはいかないはずだ。担当替え直後なので、顔繫ぎのためしばらくは頻繁に来るかもしれないが、看護師よりも医師や薬剤師が中心になるかと思う。
実際に薬を患者さんに使用するのは看護師の方が多いのだが、残念ながら看護師は軽く見られがちなのだ。実際どの薬を使用するかを決めるのは医師だから、仕方がないことだけど。
再会から何もなく日は過ぎて、五月に入った。
私は最初の日以降、彼を見ていない。
まあ、多分……早々会うことはないかな。もし見かけても、どうしたらいいかわかんないし。
再会した時にスルーされたことが、結構なダメージとなっていたようだ。以前の彼だったらまごつく私に構わず「久しぶり」と声をかけてくれただろうから。
だけど、仕方ないのかもしれない。彼も、私の顔など見たくなかったのかもしれない。
そんな私の気持ちを他所に、彼は本当にちょくちょく病院を訪れていたらしかった。ただ、日勤後に休みが入ったり夜勤になったりしていたので、主にようやく彼と遭遇したらしい中川さんから話を聞くことになったのだが。
今日も日勤だ。顔を洗い、朝食の準備をする。朝ごはんにトーストと目玉焼き、インスタントのコーンスープは考えなくて済むので毎朝の定番だ。流れ作業のように朝のルーティンをこなして、コーヒーを飲む時間を減らせばいつもと同じ時間に部屋を出ることができた。
職場では案の定、弓木くんのことが若い看護師を中心にもちきりとなった。高校生の頃から容姿はよかったけれど、そこに大人の男性特有の精悍さも感じられて一層格好よくなっていたので、致し方ないところもあるな、と思う。タイミング悪く出会えなかった人が、特に中川さんが思い切り食いついていた。
「わたしも見たかった! なんで今日も夜勤なの!」
そればっかりは、シフトが決まっているので仕方がない。彼女が弓木くんに遭遇したのは、五月に入ってからだったらしい。
そもそも、MRはしょっちゅう病院を訪れるものではない。MRとは日本語では医薬情報担当者といい、医師や薬剤師など医療従事者に向けて自社の医薬品に関する情報提供を仕事としている。もちろん取り扱いを依頼する営業活動でもあるのだが、症例や副作用の新情報などをいち早く知らせてくれたり医療現場には欠かせない人材だ。
当然、MRひとりで複数の病院を担当しているし、他の仕事もあるので病院周りだけをしているわけにはいかないはずだ。担当替え直後なので、顔繫ぎのためしばらくは頻繁に来るかもしれないが、看護師よりも医師や薬剤師が中心になるかと思う。
実際に薬を患者さんに使用するのは看護師の方が多いのだが、残念ながら看護師は軽く見られがちなのだ。実際どの薬を使用するかを決めるのは医師だから、仕方がないことだけど。
再会から何もなく日は過ぎて、五月に入った。
私は最初の日以降、彼を見ていない。
まあ、多分……早々会うことはないかな。もし見かけても、どうしたらいいかわかんないし。
再会した時にスルーされたことが、結構なダメージとなっていたようだ。以前の彼だったらまごつく私に構わず「久しぶり」と声をかけてくれただろうから。
だけど、仕方ないのかもしれない。彼も、私の顔など見たくなかったのかもしれない。
そんな私の気持ちを他所に、彼は本当にちょくちょく病院を訪れていたらしかった。ただ、日勤後に休みが入ったり夜勤になったりしていたので、主にようやく彼と遭遇したらしい中川さんから話を聞くことになったのだが。