もう一度 恋をするなら
 披露宴は、あつらえられた壇上で神様ではなく私たちゲストの前で愛を誓う人前式から始まる。
 向かい合って誓いの言葉を告げるふたりの姿は厳かで、友人ばかりの気楽な披露宴であっても茶化して雰囲気を邪魔する人もいなかった。

 ――莉子、本当に幸せそう。

 莉子だけでなく、旦那さんになる新郎もとてもうれしそうで、莉子を見つめる目は慈しむように優しく温かい。
 その後オルガンの音楽が流れる中で指輪を交換している姿に、私は披露宴が始まって早々に泣いてしまった。

「大丈夫ですか?」

 顔を手で隠しながら嗚咽を堪えるくらいに泣く私に、右隣の女性が心配そうに声をかけてくれたほどだ。

「大丈夫です、なんか、幸せそうと思ったら止まらなくなってしまって」

 すみませんほんとに、と笑いながら涙はまだぽろぽろ出てくる。友達の結婚式でこんなに泣くやついるかな、と自分でもちょっと引くぐらいの泣きっぷりだった。

「今井さん」

 左隣からハンカチが差し出される。もちろんそれは弓木くんで、私は彼を見上げた。まさか、彼からそんな風に気遣われるとは思わなくて、驚いてしばらくの間見つめてしまう。
 そうすると、彼の表情が居心地悪そうに困ったものに代わり、私は慌てて言った。

「あ、ありがとう、弓木くん」

 ハンカチを受け取りかけて、そういえば自分も持っていたことを思い出して遠慮する。

「大丈夫、持ってるから」
「そうか?」
「うん。幸せそうでいい結婚式だね」

 クラッチバッグからハンカチを取り出して、目元を押さえる。ハンカチにアイカラーやマスカラの色が移ってしまって、弓木くんに借りなくて正解だった。


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