もう一度 恋をするなら
 楽しんでもらえるようなパーティーにしたくて、と莉子が言っていた通り、ゲストのことを考えた本当に楽しい披露宴だった。
 友人ばかりの気楽な場ということもあり、有志による余興も楽しく会場に笑い声が溢れる。

 弓木くんはお酒は飲んでいなかったけれど、周囲の友人にあれやこれやと絡まれて楽しそうだった。大人になった彼のそんな姿は珍しくて、ついちらちらと見てしまう。

 そしてここでも彼は、女性陣の視線を浴びていた。新婦側の友人で、私は顔を知らないので、大学の友人か勤務先の同僚だろうか。中には余興と余興の合間に交流目的で席を立ち、直接彼に声をかけにくる人もいた。
 彼は、ここでも塩対応だったが。女性が近づいてきたと思った途端、表情がすんっと無になる。連絡先を聞かれても「友人にしか教えていない」とはっきりと言う。

 そんな彼を、同じテーブルの友人たちはよくわかっているようで。

「あー、こいつそういうのダメなんだよー!」
「そうそう。誰に対してもこんなんだから気にしないでねー」

 そうフォローしてついでに乾杯してから、やんわりと追い返していた。

「相変わらずの顔面力だな」
「うるさいな、苦手なんだよああいうのは」

 からかわれてそんな言葉で言い返していたが、眉尻を下げて少し困ったような表情だった。ちなみに、同テーブルにいる女性は私以外にひとりだけだったが、弓木くんのこの塩対応は知っていたらしい。そのせいか弓木くんと同じ高校なんだろうと思うのだが、彼女が弓木くんに話しかけることはまったくなかった。
 そんな賑やかな雰囲気で披露宴は進んだ。
 途中、ケーキ入刀やキャンドルサービスもあって結婚式の感動も伝わってくる。
 キャンドルサービスは会場の照明を落として、キャンドルの火だけで行われた。各テーブルの中央に設置されている花で飾られたキャンドルに新郎新婦が灯りを灯していく。
 しっとりとした音楽の中、ひとつひとつ灯りをつけてはゲストに向けて丁寧にお辞儀をしていくふたり。私たちのテーブルまで来て、中央のキャンドルに火を灯す。

「わ……綺麗」

 キャンドルの火が近くにある飲み物のグラスに光が反射して、きらきらとロマンティックな空間が広がった。
 新郎が友人にからかわれて、照れくさそうに笑っている。隣の莉子は私を見て微笑んだ後、私の隣に視線を移す。
 つられて私も隣を見て、弓木くんと目が合った。

「あ……」

 キャンドルの灯りがそう見せるのだろうか。
 昔、仲が良かった時のように、今なら話せる気がする。
 だけど――
 再会してからの、誰に対しても壁を作るような、病院で会う時の彼の様子が頭を過る。どうしていいかわからなくなって、私は思わず目を逸らしてしまった。

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