もう一度 恋をするなら
「さっきは前みたいに呼んだのに」
「パーティの最中のこと? あの時はついぽろって出ただけで」
「その方が言い慣れてるってことだろ。……いや、でも、ごめん。俺が悪いな」
彼は、何か悔やむような表情で目を逸らし、頭を掻いた。何が『悪い』のか、彼は口に出していないけれど、なんとなく理解する。きっと、再会してからの彼の素っ気ない態度のことを言っているのだ。
別に、悪いとは思わないけど……私たちの事情から言って気まずいのは当然だし。私だって、弓木くんに嫌われているんじゃないかと思っていたし。
きっとそれは、彼も同じだったのだろう。それにしたって、私だけでなく全方向へ向けての塩対応はすごかった。
だから余計に、こんな風に催促されると、なんだかくすぐったいしとても照れくさい。
「えと、じゃあ……弓木くん」
「おう」
不思議なことに、ちょっとずつでも会話をしているとあんなにぎくしゃくしていた私たちは徐々に高校生の頃のような空気に戻りつつあった。悩んだことが嘘のように、少しずつ私も力が抜けて、弓木くんも時々口元に笑みが浮かんだ。
頼んだものが全部そろってもう店員の出入りはないだろう状況が整って、私は改めて背筋を正した。まずは、こうして話せるようになったのだからいうべきことを言わなければいけない。
「弓木くん。ずっと謝りたかった。あの時のこと、本当にごめんなさい」
膝に両手を置いて、深く頭を下げる。すると、すぐに正面から手が伸びてきて私の肩を掴んで起き上がらせた。
「謝ってほしくて話がしたかったわけじゃない。それに、お互いの親がやらかしたってだけで俺らは何も悪くないだろ」
「……でも。あれきりになっちゃって、会いにいくのがすごく遅くなったからもうその時には弓木くんマンションからいなくなってしまった後だったから」
あの時の感情を思い出して、唇を嚙み締める。弓木くんは、驚いたようで目を見張った。
「あの後来たんだ」
「もう一年くらい経っちゃってたけど。マンションに居づらくなって出ていくしかなかったって、同じ階に住んでたおばちゃんがこっそり教えてくれた。私たち親子のせいだって聞いて……どこでどうしてるのかって……」
弓木くんのお父さんは、ご近所さんでは人当たりと見た目の良さで割と評判だった。だからこそ、不倫となると一気に噂が広がって反動も大きかったのだろうと思う。
「違う。うちの親父も関わったんだし、何がどうだろうと今井さんが謝る必要なんて欠片もない」
強い口調ではっきりと言い、それから少し声を和らげる。
「ただ、あれから心配したんだ。今井さんのご両親、かなり感情的になってたから……今井さんが心配だった」
そこまで話して、ふたりともしばらく言葉を失った。私たちはお互いに、相手のことを心配してずっと数年、引きずってきたのだ。だからこそ、こうしてまた会えたのがただの偶然でも運命のように感じられた。
「謝罪とか何が悪いかとかは、もういい。俺らには関係ないよ。あれから、どうしてた? あの後のこととか、今のことが聞きたいよ、俺は」