もう一度 恋をするなら
九十分の時間制限付きだったため、微妙な雰囲気の途中で時間切れとなり私たちは店を出た。駅までの道を、ゆっくりとしたペースで歩くが、それでももう見えているのですぐに着いてしまいそうだ。
「そういえば、今井さんはどのあたりに住んでる……あ、聞いてもよかった?」
なぜか遠慮がちな聞き方に思わず笑いながら答える。
「東央医療センターから三駅行ったとこ。三篠駅のすぐそこ。弓木くんは?」
「会社の真ん前。家との往復ばっかりだし便利なのが一番でさ」
「仕事忙しいとそうなるよね。私も通勤重視で選んだの。休みは寝てるかたまに友達が泊りに来るくらいだし」
「彼氏とデートとかは? でも医療関係だとどっちも忙しいんだろうな」
「え?」
びっくりして隣を歩く弓木くんを見上げる。
「いないけど、彼氏」
「え?」
「え、もしかして誰か勘違いしてた?」
「……いや。本当にいるのかわからなかったから、悪い。確認したくて聞いた。かっこ悪いな、俺」
バツの悪そうな顔で、それでも弓木くんは私から目をそらさなかった。私は驚いて彼を見ていて、注意力が散漫になっていたらしい。
弓木くんが、何かに気づいた様子で私に手を伸ばしてくる。直後、どんと背中に人がぶつかった。バランスを崩して前へ倒れこみそうになった瞬間、私は弓木くんの腕に抱き留められていた。
「ご、ごめん」
「大丈夫か?」
「うん、びっくりしただけ。ありがとう」
スーツの上からでも伝わる固い体の感触に、男らしい逞しさを感じた。すぐ目の前に弓木くんのつけているネクタイがあって、私の背中は彼の大きな手に支えられている。抱きしめられるような至近距離に慌てて距離を取ろうとしたけど、弓木くんの手は私を離さなかった。
時折行きかう人を避けて私の体を支えながら彼は道の端へ寄り、改めて私の背に両手を回す。強く抱きしめるような力ではないけれど、彼の腕に囲われているみたいだった。
「弓木くん」
見上げると、弓木くんの目が私をまっすぐ見下ろしている。眉間に少し力が入って、彼の真剣さが伝わってくるようだった。
「本当は今日、俺は今井さんに会いに来たんだ。彼氏がいるって聞いたけど、諦められなかった」
「そういえば、今井さんはどのあたりに住んでる……あ、聞いてもよかった?」
なぜか遠慮がちな聞き方に思わず笑いながら答える。
「東央医療センターから三駅行ったとこ。三篠駅のすぐそこ。弓木くんは?」
「会社の真ん前。家との往復ばっかりだし便利なのが一番でさ」
「仕事忙しいとそうなるよね。私も通勤重視で選んだの。休みは寝てるかたまに友達が泊りに来るくらいだし」
「彼氏とデートとかは? でも医療関係だとどっちも忙しいんだろうな」
「え?」
びっくりして隣を歩く弓木くんを見上げる。
「いないけど、彼氏」
「え?」
「え、もしかして誰か勘違いしてた?」
「……いや。本当にいるのかわからなかったから、悪い。確認したくて聞いた。かっこ悪いな、俺」
バツの悪そうな顔で、それでも弓木くんは私から目をそらさなかった。私は驚いて彼を見ていて、注意力が散漫になっていたらしい。
弓木くんが、何かに気づいた様子で私に手を伸ばしてくる。直後、どんと背中に人がぶつかった。バランスを崩して前へ倒れこみそうになった瞬間、私は弓木くんの腕に抱き留められていた。
「ご、ごめん」
「大丈夫か?」
「うん、びっくりしただけ。ありがとう」
スーツの上からでも伝わる固い体の感触に、男らしい逞しさを感じた。すぐ目の前に弓木くんのつけているネクタイがあって、私の背中は彼の大きな手に支えられている。抱きしめられるような至近距離に慌てて距離を取ろうとしたけど、弓木くんの手は私を離さなかった。
時折行きかう人を避けて私の体を支えながら彼は道の端へ寄り、改めて私の背に両手を回す。強く抱きしめるような力ではないけれど、彼の腕に囲われているみたいだった。
「弓木くん」
見上げると、弓木くんの目が私をまっすぐ見下ろしている。眉間に少し力が入って、彼の真剣さが伝わってくるようだった。
「本当は今日、俺は今井さんに会いに来たんだ。彼氏がいるって聞いたけど、諦められなかった」