白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ王女は甘い夜を過ごしたい~【全年齢版】
〝毒キノコ病〟だなんて嘘のことは言わなかった。
まず間違いなく何の話か聞かれるだろうし、そんな細かい事情を話す気力も今はない。
何より、閨を共にしようと積極的なくせに半端な性知識しか持たない一面は、アルバート以外は誰も知らなくていい。
「あー、あれね。お前が寝不足気味だから、プリムローズちゃんが解消してあげられればと思って」
「それで、あんなことを」
「お前がこんな時間からここにいるってことは上手くできなかったのかな」
他人事だと思って軽い口ぶりや、プリムローズを気安く呼ぶことが気に障って仕方なかった。
プリムローズと簡単に距離を詰めようとしている従兄兼友人相手に、間違いなくアルバートは嫉妬している。
「無断で妻に触れようとしないでくれ」
手が早いフレデリックでも、さすがにプリムローズにまで手を出そうとするとは思っていなかった。最低限の線引きくらいはしていると信頼があったのだ。
それを裏切られたような――いや、自分の不甲斐なさが招いている結果に他ならない。分かっている。分かっていても、気持ちがささくれ立った。
「触れるつもりではいるけど触れてないし、しばらくはその気配もないよ。ただ彼女も満更でもなかったみたいだし、お前と離縁してから堂々と口説くことにしようかな」
「彼女はフィラグランテに帰すと説明したはずだ」
「別にその後に結婚を申し込むのは俺の自由だろう」
「だめだ、彼女は好きな男と添い遂げるべきだ」
「――ふうん」
フレデリックは机の端に両手をつく。
「なあ、一年後にプリムローズちゃんを国に帰したら――エリザベス嬢と結婚するつもりなのか」
全く予想だにしなかった名前が出て来てアルバートは顔をしかめた。
「何故ここでその名前が出るんだ」
「幼馴染みだし、今も割と仲も良さそうだから?」
深い理由があってのことではないらしい。
与り知らぬところで、自分に関する歓迎すべからざる噂が流れているというわけでもないようだ。
「仲が良いからって理由で娶っていたら、お前の妻は最終的に何人になるんだか」
「まあ、それもそうだけど」
「誰とも結婚なんかしない。離縁の理由を不能だとか種がないとか、非を全部被れば話だって回って来ないはずだ」
思いついたことを適当に並べ立てて、我ながら良い考えだと思った。
プリムローズに非があるような事態だけは避けなければいけない。その為ならどんな謗りだって受けられた。
「あいにくとお前に限っては周りがそうは思ってない。一年限りの結婚だと知れば、ますますエリザベス嬢を後妻に迎える気でいるのだと思う。特に、その実家の侯爵家はこれ幸いとばかりに動いて来るんじゃないか。実際は不能でも種なしでもないんだろ」
こういう時に限ってフレデリックは至って冷静に指摘する。
だからこそ補佐を務められるのだが今は正論が耳に痛い。
「お前さ、もしかしてこの十年、プリムローズちゃんと結婚することしか頭になかったとか?」
まず間違いなく何の話か聞かれるだろうし、そんな細かい事情を話す気力も今はない。
何より、閨を共にしようと積極的なくせに半端な性知識しか持たない一面は、アルバート以外は誰も知らなくていい。
「あー、あれね。お前が寝不足気味だから、プリムローズちゃんが解消してあげられればと思って」
「それで、あんなことを」
「お前がこんな時間からここにいるってことは上手くできなかったのかな」
他人事だと思って軽い口ぶりや、プリムローズを気安く呼ぶことが気に障って仕方なかった。
プリムローズと簡単に距離を詰めようとしている従兄兼友人相手に、間違いなくアルバートは嫉妬している。
「無断で妻に触れようとしないでくれ」
手が早いフレデリックでも、さすがにプリムローズにまで手を出そうとするとは思っていなかった。最低限の線引きくらいはしていると信頼があったのだ。
それを裏切られたような――いや、自分の不甲斐なさが招いている結果に他ならない。分かっている。分かっていても、気持ちがささくれ立った。
「触れるつもりではいるけど触れてないし、しばらくはその気配もないよ。ただ彼女も満更でもなかったみたいだし、お前と離縁してから堂々と口説くことにしようかな」
「彼女はフィラグランテに帰すと説明したはずだ」
「別にその後に結婚を申し込むのは俺の自由だろう」
「だめだ、彼女は好きな男と添い遂げるべきだ」
「――ふうん」
フレデリックは机の端に両手をつく。
「なあ、一年後にプリムローズちゃんを国に帰したら――エリザベス嬢と結婚するつもりなのか」
全く予想だにしなかった名前が出て来てアルバートは顔をしかめた。
「何故ここでその名前が出るんだ」
「幼馴染みだし、今も割と仲も良さそうだから?」
深い理由があってのことではないらしい。
与り知らぬところで、自分に関する歓迎すべからざる噂が流れているというわけでもないようだ。
「仲が良いからって理由で娶っていたら、お前の妻は最終的に何人になるんだか」
「まあ、それもそうだけど」
「誰とも結婚なんかしない。離縁の理由を不能だとか種がないとか、非を全部被れば話だって回って来ないはずだ」
思いついたことを適当に並べ立てて、我ながら良い考えだと思った。
プリムローズに非があるような事態だけは避けなければいけない。その為ならどんな謗りだって受けられた。
「あいにくとお前に限っては周りがそうは思ってない。一年限りの結婚だと知れば、ますますエリザベス嬢を後妻に迎える気でいるのだと思う。特に、その実家の侯爵家はこれ幸いとばかりに動いて来るんじゃないか。実際は不能でも種なしでもないんだろ」
こういう時に限ってフレデリックは至って冷静に指摘する。
だからこそ補佐を務められるのだが今は正論が耳に痛い。
「お前さ、もしかしてこの十年、プリムローズちゃんと結婚することしか頭になかったとか?」