白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ王女は甘い夜を過ごしたい~【全年齢版】
『愛しいプリムローズ様
年に数度、贈り物を直接手渡したくてお会いする度、美しい淑女へと成長しているあなたを妃に迎えられる日を待ち遠しく思います。
こちらは寒さにも負けずたくさんの花が咲きはじめました。きっと、健気で可愛らしいレモンイエローの小さな花は、あなたの国でも咲いていることかと思います。何しろあなたと同じ名前を冠する花なのですから。もしかしたら、こちらで咲くより種類も多いかもしれません。それでも一度、お時間があればこちらへ鑑賞に来てはいただけませんか。
あなたとよく似た花を大切に育てているところを、ぜひお見せしたいのです。 アルバートより』
エリザベスではなくプリムローズに宛てた手紙だ。
――どうして。
読み上げるのを良いことに名前の部分を変えているのではないか。
アルバートから手紙を受け取って目を通すと、確かに宛名はプリムローズになっていた。でもどうせ、最初から読んで聞かせる為に用意した手紙に違いない。いつまでもプリムローズが懐妊もせずに夫婦仲を疑われた時、周囲を欺く為だと思えば納得も行く。
「他の手紙も、確認しますか?」
そう言ってアルバートはしっかりと封を留めた封書を自らの手で次々と開いた。
「アルバート様が、そこまで仰るのなら……」
たくさん偽造した手紙を見せて、一年限りの妃の機嫌を取りたいらしい。それで一年我慢させるつもりならそれでも良いと思ってしまった。
一年かけて少しずつアルバートを嫌いになろう。なれはしないし、少しでも優しくされたらきっと、もっと好きになってしまうに違いないけれど。
「できれば、黙読していただけると助かるのですが」
「分かりました」
とりあえずいちばん近いところに置かれた封書を手に取り、便箋を開く。読み進めるうちにみるみる頬が熱くなるのが分かった。
羞恥と、ほんの少し――いや、それなりの怒りによるものだ。
「まだ恋も知らない九歳のあなたに将来、政略結婚をさせてしまうことが申し訳なく、でも私の元に嫁いで来てくれることを嬉しく思っていました」
再び涙が潤んだ。
「わたくしは、とても悲しいのに人前で涙は見せず、一人で悲しみに耐える王子様を支えて差し上げたいと、その九歳の時からずっと思っておりましたわ」
アルバートの真っすぐな想いが込められたこの手紙たちを読んでいたのなら、どんなに幸せだったことだろう。
「姫……」
「わたくしがこの十年間、アルバート様の元にお嫁に行ける日をどれだけ楽しみにしていたか、知りもしないで……っ」
「――すみません」
「人の気持ちを勝手に決めつけないで下さい」
とうとうしゃくりあげれば抱き締められた。
背中に手を回し、好き、と繰り返す。私もです、そう返って来るのがたまらなく幸せだった。
アルバートの肩に頬を擦り寄せる。初めてアルバートに甘えて、それからたった一つの願いを口にする。
「責任を持って、少しだけじゃなくって全部、入れて下さい」
「あなたは、ご自身が何を仰っているのか分かっているのですか」
「もちろんですとも」
アルバートは困ったように笑う。
「分かりました。私も――あなたに全部、入れたいです。その華奢な身体で、どうぞ受け入れて下さい」
頬をくすぐるように指先で涙を拭われながら耳元に囁かれて顔を上げる。
正面から見つめ合うのはまだ恥ずかしい。切なさで胸がいっぱいになって苦しくなる。
そっと唇が触れ合った。
結婚式で誓いの為にした口づけ以来だ。
でも、これが本当の意味で初めての口づけだった。
年に数度、贈り物を直接手渡したくてお会いする度、美しい淑女へと成長しているあなたを妃に迎えられる日を待ち遠しく思います。
こちらは寒さにも負けずたくさんの花が咲きはじめました。きっと、健気で可愛らしいレモンイエローの小さな花は、あなたの国でも咲いていることかと思います。何しろあなたと同じ名前を冠する花なのですから。もしかしたら、こちらで咲くより種類も多いかもしれません。それでも一度、お時間があればこちらへ鑑賞に来てはいただけませんか。
あなたとよく似た花を大切に育てているところを、ぜひお見せしたいのです。 アルバートより』
エリザベスではなくプリムローズに宛てた手紙だ。
――どうして。
読み上げるのを良いことに名前の部分を変えているのではないか。
アルバートから手紙を受け取って目を通すと、確かに宛名はプリムローズになっていた。でもどうせ、最初から読んで聞かせる為に用意した手紙に違いない。いつまでもプリムローズが懐妊もせずに夫婦仲を疑われた時、周囲を欺く為だと思えば納得も行く。
「他の手紙も、確認しますか?」
そう言ってアルバートはしっかりと封を留めた封書を自らの手で次々と開いた。
「アルバート様が、そこまで仰るのなら……」
たくさん偽造した手紙を見せて、一年限りの妃の機嫌を取りたいらしい。それで一年我慢させるつもりならそれでも良いと思ってしまった。
一年かけて少しずつアルバートを嫌いになろう。なれはしないし、少しでも優しくされたらきっと、もっと好きになってしまうに違いないけれど。
「できれば、黙読していただけると助かるのですが」
「分かりました」
とりあえずいちばん近いところに置かれた封書を手に取り、便箋を開く。読み進めるうちにみるみる頬が熱くなるのが分かった。
羞恥と、ほんの少し――いや、それなりの怒りによるものだ。
「まだ恋も知らない九歳のあなたに将来、政略結婚をさせてしまうことが申し訳なく、でも私の元に嫁いで来てくれることを嬉しく思っていました」
再び涙が潤んだ。
「わたくしは、とても悲しいのに人前で涙は見せず、一人で悲しみに耐える王子様を支えて差し上げたいと、その九歳の時からずっと思っておりましたわ」
アルバートの真っすぐな想いが込められたこの手紙たちを読んでいたのなら、どんなに幸せだったことだろう。
「姫……」
「わたくしがこの十年間、アルバート様の元にお嫁に行ける日をどれだけ楽しみにしていたか、知りもしないで……っ」
「――すみません」
「人の気持ちを勝手に決めつけないで下さい」
とうとうしゃくりあげれば抱き締められた。
背中に手を回し、好き、と繰り返す。私もです、そう返って来るのがたまらなく幸せだった。
アルバートの肩に頬を擦り寄せる。初めてアルバートに甘えて、それからたった一つの願いを口にする。
「責任を持って、少しだけじゃなくって全部、入れて下さい」
「あなたは、ご自身が何を仰っているのか分かっているのですか」
「もちろんですとも」
アルバートは困ったように笑う。
「分かりました。私も――あなたに全部、入れたいです。その華奢な身体で、どうぞ受け入れて下さい」
頬をくすぐるように指先で涙を拭われながら耳元に囁かれて顔を上げる。
正面から見つめ合うのはまだ恥ずかしい。切なさで胸がいっぱいになって苦しくなる。
そっと唇が触れ合った。
結婚式で誓いの為にした口づけ以来だ。
でも、これが本当の意味で初めての口づけだった。