白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ王女は甘い夜を過ごしたい~【全年齢版】
「他の人と結婚?」
「わたくしとの白い結婚を終えたら、他の方を娶られるおつもりなのでしょう?」
アルバートの顔色が変わった。
まさかプリムローズはそんな簡単なことにも思い至れないと思われていたのだろうか。だとしたら妹扱いされているのではなく、単純に見くびられているようで悲しくなる。
「誰からその話を?」
「エリザベス様です。先程そう仰っていました」
余計なことを。
アルバートの表情がそう言っている気がした。
だったら、アルバートの口から直接プリムローズに告げたら良かったのだ。白い結婚だなんて遠回しなことを言わず、本当は別に想い続けている人がいるのだと。
「余計なお世話かと思いますけれど、アルバート様は女性を見る目があまりよろしくないかと思いますわ」
エリザベスの発言を思い出したらムカムカして来たから思わず口にしてしまう。
自分こそが王太子妃に相応しいとまでは言わないけれど、さすがに外交相手になりうる他国の王族にあのような失礼な発言をする王太子妃はどうかと思う。正式に婚約なりしたら教育がはじまるのだとしても、ある程度成長した状態で身につけるのは難しいのではないだろうか。
(一年で祖国に帰されるわたくしには関係ありませんけれど!)
さらにムカムカとしているとアルバートは困ったように眉尻を下げた。
「決してそのようなことはないと思――」
「あります!」
思わず大きな声でアルバートの言葉を遮ってしまった。プリムローズが大きな声を出せるとは思っていなかったのか、アルバートは驚いたように目を丸くしている。
アルバートはエリザベスと何年も過ごしているから、彼女の良い部分をそれなりに知っているのかもしれない。でも初対面のプリムローズにとっては好感が持てない相手だった。ましてや、自分の負けが確定している恋のライバルなのだからなおさらだ。
(そんなに庇うくらい好きなら、わたくしとの婚約だって拒否したら良かったのに)
確かに王族同士の婚姻は友好を深めるのに適した方法だけれど、探せば他にも方法はあるはずだ。
このままだと、そんな女性を正妃に据えようとしているアルバートにまで幻滅してしまう。幻滅したって嫌いになるわけじゃない。だから、どうして自分は選ばれなかったのかと苦しくなるのだ。
「すぐに戻ってきますから、少しだけ待っていてもらえますか、姫」
取りつく島もなくなって来たプリムローズへの接し方を変えようと考えたのか、アルバートは一言断ると返事を待たずに部屋を出た。
しばらくして戻って来ると、厚めの一冊の本と数枚の封筒を胸に抱えている。
「こちらは一体……?」
「私の日記と、書いただけで出せずにいた手紙です。どれでも構いません。好きなものを読んで下さい」
日記と手紙なんてプライバシーに大きく関わるもの筆頭だ。いくら本人に読んで良いと言われても躊躇ってしまう。そもそも、エリザベスがいかに優れた女性なのか褒めそやしているであろう内容なんて読みたくもない。
プリムローズがおずおずと視線を向けるとアルバートは封筒の一つから綺麗に折りたたまれた便箋を取り出して読み上げた。
「わたくしとの白い結婚を終えたら、他の方を娶られるおつもりなのでしょう?」
アルバートの顔色が変わった。
まさかプリムローズはそんな簡単なことにも思い至れないと思われていたのだろうか。だとしたら妹扱いされているのではなく、単純に見くびられているようで悲しくなる。
「誰からその話を?」
「エリザベス様です。先程そう仰っていました」
余計なことを。
アルバートの表情がそう言っている気がした。
だったら、アルバートの口から直接プリムローズに告げたら良かったのだ。白い結婚だなんて遠回しなことを言わず、本当は別に想い続けている人がいるのだと。
「余計なお世話かと思いますけれど、アルバート様は女性を見る目があまりよろしくないかと思いますわ」
エリザベスの発言を思い出したらムカムカして来たから思わず口にしてしまう。
自分こそが王太子妃に相応しいとまでは言わないけれど、さすがに外交相手になりうる他国の王族にあのような失礼な発言をする王太子妃はどうかと思う。正式に婚約なりしたら教育がはじまるのだとしても、ある程度成長した状態で身につけるのは難しいのではないだろうか。
(一年で祖国に帰されるわたくしには関係ありませんけれど!)
さらにムカムカとしているとアルバートは困ったように眉尻を下げた。
「決してそのようなことはないと思――」
「あります!」
思わず大きな声でアルバートの言葉を遮ってしまった。プリムローズが大きな声を出せるとは思っていなかったのか、アルバートは驚いたように目を丸くしている。
アルバートはエリザベスと何年も過ごしているから、彼女の良い部分をそれなりに知っているのかもしれない。でも初対面のプリムローズにとっては好感が持てない相手だった。ましてや、自分の負けが確定している恋のライバルなのだからなおさらだ。
(そんなに庇うくらい好きなら、わたくしとの婚約だって拒否したら良かったのに)
確かに王族同士の婚姻は友好を深めるのに適した方法だけれど、探せば他にも方法はあるはずだ。
このままだと、そんな女性を正妃に据えようとしているアルバートにまで幻滅してしまう。幻滅したって嫌いになるわけじゃない。だから、どうして自分は選ばれなかったのかと苦しくなるのだ。
「すぐに戻ってきますから、少しだけ待っていてもらえますか、姫」
取りつく島もなくなって来たプリムローズへの接し方を変えようと考えたのか、アルバートは一言断ると返事を待たずに部屋を出た。
しばらくして戻って来ると、厚めの一冊の本と数枚の封筒を胸に抱えている。
「こちらは一体……?」
「私の日記と、書いただけで出せずにいた手紙です。どれでも構いません。好きなものを読んで下さい」
日記と手紙なんてプライバシーに大きく関わるもの筆頭だ。いくら本人に読んで良いと言われても躊躇ってしまう。そもそも、エリザベスがいかに優れた女性なのか褒めそやしているであろう内容なんて読みたくもない。
プリムローズがおずおずと視線を向けるとアルバートは封筒の一つから綺麗に折りたたまれた便箋を取り出して読み上げた。