これは、運命を信じてみた話。

Everyday -毎日-

中学生恋愛というものは、付き合っても連絡を取るだけ、一緒に帰るだけ…と言ったなんの変哲も無いやりとりを繰り返すだけのものだと思っていた。小学校を無事卒業した私たちは、中学校に入学。時間が経つのはあっという間で、もう二年生の十二月も終わりそうな頃になっていた。

四人の中で一番最初に相手ができたのは守だった。守は顔こそいいものの、言動は若干軽く、物事を重く受け止めるタイプでは無いので、軽く付き合っているものだと思っていた。しかし守の中学生恋愛は、私が想像していたものとははるかにかけ離れているものだった。

「守!今日どこ行こっかぁ?」
「そうだなー、昨日はファミレスだったし、今日は俺の家に来る?外寒いし。」

桃色っぽい空間を尻目に、ため息をついた。机越しに向かい合って座っている目の前で頬杖をついた志希の顔は、般若の面を貼り付けたような表情をしている。

「ほんと軽い…ほんの一週間くらい前は隣のクラスの子だったのに…」
「そんなもんなのかな、男の子ってみんなああなっちゃう?」
「そんなわけないじゃん!現に晴翔は今まで通りでしょ。誰も彼もがああなるわけじゃないの!」

晴翔の名前が出てドキリとした。信頼してないわけではないが、恥ずかしくてまだ言えない。まぁ志希のことだから察しはついてるんだろうけど。

「愛由はどんな男の子と付き合いたい?」

ニヤニヤしながら恋バナをスタートさせた志希を見ながら、理想を考える。

「えー…っとね。イケメンでー!優しくてー!私のこと大事にしてくれてー…。あ、あとは銀髪!青眼!!」

「それは無理でしょ」と、笑いながら志希が言う。

「大体現実で銀髪青眼が似合う人がいたらそれこそ事件でしょ。」
「んー、やっぱり無理だよね…やっぱり自分のことを好きでいてくれる人が大前提かな。好きになられたら、好きになっちゃうのかも。」
「それわかるな。俺もそんな感じ」

全身の毛穴から汗が吹き出しそうになった。後から晴翔が急に会話に参加し出したのだ。

「あ、晴翔もそうなんだ。私はどっちかって言うと、好きになったらとことんすきすきー!ってなるかなぁ」
「へー、志希は俺とは逆なんだな。」
「まぁ人それぞれってことよ。ちなみに私は守みたいな軽い男は嫌だなーって思うよ。」

笑いながら談笑している2人の声が遠くに聞こえる。晴翔がそばにいるだけで体の動きはぎこちなくなり、下を向いてしまう。

「晴翔はあんな風にならないでよね?」
「あったりまえだろ。俺は…”超”一途だし。」
「やっぱり!だから言ったでしょ、愛由。晴翔は大丈夫だって!」
「えっ、?なにが、っ。」

急に自分に振られて、戸惑ってしまう。焦点が合ってなかった目線をあげると、晴翔と目が合った。

「俺は一途だよ、って話。しかも、”超”な。」

目を細めて微笑んだ彼の笑顔があまりにも綺麗で、また下を向いてしまう。「そうなんだ、」と絞り出すような声で話すのが精一杯だった。


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