これは、運命を信じてみた話。


その日の放課後、私はいつもの習い事の水泳には行かず、吹奏楽部でトランペットを吹いている志希の自主練に付き合っていた。ちなみに守はバスケ部、晴翔はサッカー部だ。

今日は志希に、晴翔のことが好きなことを打ち明けようと思う。しかし言葉にするだけですら躊躇ってしまうほど、恥じらいが大きくなっていたため、なかなか切り出せなかった。
放課後の教室には夕日が差し込んでいて、志希のトランペットに反射した光が眩しかった。志希の奏でる「ロッキーのテーマ」を聞きながら、ぼんやりとしていると、曲が止まった。

「愛由。どーしたん?なんかあったの?」

いつもと変わらない調子で、曲を聞いては、おしゃべりを楽しんだりを繰り返していたつもりだったが、心境の変化を察したらしい志希が問いかけてきた。本当に志希は察しが良い。いつもは心を読まれてる気分になって驚きが耐えないが、今回ばかりは感謝した。同時に、自分のことを1番よく理解してくれているであろう志希という人物に、心の内を打ち明ける決心がついた。
志希に話した。気付いたらもう恋をしていたこと、最近になってより一層好きなことを自覚するようになったこと。1から10まですべて話す最中、志希は何も聞かないでひたすら聞いてくれた。

「そうだろうと思ったよ。だって小学生の頃と明らかに態度が違うもん。」
「そんなに違う?」
「違う違う!明らかに晴翔の前でだけ静かだよ!」

自覚がなかった。そんなに態度に出ていたことに驚いたのと同時に、志希にバレてたということは晴翔にもバレていたんじゃないかと思った私の心を読んだかのように、志希は話し始めた。

「あ、でも気付いてるのは私だけだと思うよ。晴翔はー、多分、鈍感だから大丈夫!」
「え、ほんとにそうかな?…なんか、バレてそう。」
「大丈夫だって!………で、好きになったからには、カップル成立!まで行くよね?」

そんなところまで考えてなかった。カップルって…

「カップルって、守みたいなこといってる?もう大人みたいなことしてるけど…」
「あー、あそこまで行かなくて大丈夫!愛由はまず、手を繋ぐくらいを想像しとけばいーのよ!」
「だっ、だめだよ!わたし手汗やばいもん!」
「晴翔なら、それでもいいよって言ってくれるから!多分!」

そのあと私たちは、暗くなるまで晴翔の話をした。誰にもこの気持ちを打ち明けてこなかった私としては、今まであったことを話すのが楽しかった。

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