これは、運命を信じてみた話。


小学生の頃は、それこそ男女なんてものは関係なかったようなものだが、私がその頃から晴翔を特別に見るようになったのにはいくつか理由がある。

水泳の授業で、1番深いところで足をつって溺れかけたのを見つけて、助けようとしてくれた。遠足で道に迷って1人迷子になった私を探し、見つけてくれたこともあったし。臨海学校では夜の花火で火を付けてくれたこともあった。
(最後のは志希に笑われた。)
いつだって自分を気にかけてくれてるような気がして、その度にドキドキしていた。あれが恋だとはまだわからなかった時期は、今のように静かになることもなく、一緒に笑いあったり、走ったり、ふざけたり出来ていた。
それが今になってみると、よくあんなことできてたと思う。中学生になってものの一年半で見事に男の子に成長した晴翔は、サッカー部のエースストライカーで、声も低くなり、多分だけど体もがっしりし始めているのだろう。想像するだけで色々耐えられなくなりそうだから、もう考えないようにしてるけど。

過去の回想を話していると、志希が突拍子もないことを言い始めた。

「なんかさぁ…晴翔って、愛由だけは特別視してるっぽいよね。」
「え、なんで?」
「だって、愛由だけ『平川』呼びでしょ?私たちのことは志希と守って呼ぶくせに。それに、今までは愛由って呼んでたのに。おかしくない?」

確かに。私も気にはなっていたが言及しないでおいたのだ。それが始まったのは、私が中学校に入って、ちょうど意識し始めた時だった。突き放された感覚すらあったため、口に出したくなかった。

「悪い意味で、特別…とかだったらやだな。でも、そうなのかな…」
「あー、ごめんごめん。違うし、そうじゃないと思うよ。もしかしたら、別にあゆって名前の知り合いが出来たのかもしれないし。この中学は別の小学校からも来てるしさ。」

なんとなくその話を続けなくなかった私は、黙りこくった。もしそうじゃなかったら、普通に、悪い意味だったら…。

「そんな気にすることでもないと思うよ、気まぐれなのかも。…それよりさ!中学生になってからは、なんかエピソードないの?聞きたい!」
「…えー、っと…。そうだなぁ…。」

中学生になってからは、向こうの成長があまりにも急激で、衝撃的だったため、ほとんど喋れなくなったけど、でも一つだけ、ある。

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